武田薬品工業、水の使用量約3割減に成功 大阪工場で環境への負荷抑制

周辺環境への負荷を減らすだけでなく、蒸留水製造に追加投資せず薬を増産できたという。工場での水使用の「見える化」は珍しい。

» 2024年03月22日 08時55分 公開
[産経新聞]
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 武田薬品工業が大阪工場(大阪市淀川区)で、製品の製造や設備の洗浄に使用する蒸留水の使用量をデータ解析により「見える化」し、工程を見直すことで、蒸留水の使用量を従来比で約27%削減することに成功した。周辺環境への負荷を減らすだけでなく、蒸留水製造に追加投資せず薬を増産できたという。工場での水使用の「見える化」は珍しい。

蒸留水の使用量削減に取り組む武田薬品工業大阪工場=大阪市淀川区十三本町(山田耕一撮影)

 医薬品の工場では、医薬品の製造や、容器・設備の洗浄などに使用する水道水を殺菌して不純物を濾過(ろか)した蒸留水を大量に使う。蒸留水をためるタンクが枯渇すると製造作業が停止するほか、増産に向けた蒸留水製造の設備投資も重荷になる。

 武田の大阪工場では、これまで分かっていなかった工程ごとの蒸留水の使用量や使用時間を、配管に取り付けたセンサーで計測・解析して、グラフとして「見える化」。製造・品質部門専属のデータサイエンスチームが協力した。

 「見える化」したデータを基に、不必要な水を使わないようにしたり、複数の工程や設備でピークが重なっていた使用時間を分散し、水が枯渇しないようにした。

 こうした取り組みにより、同工場における注射剤の製造工程で蒸留水の使用量を年間45万リットル以上、蒸留水製造に必要な水道水を200万リットル以上、都市ガスを7900立方メートル以上、それぞれ削減できた。いずれも従来比約27%減。

 同社は令和7年度までに海外工場も含めた全社の取水量を元年度比5%削減する目標を掲げる。同工場製造部の神田貴仁さん(31)は「データサイエンスや(設備を維持・管理する)エンジニアリングの部門と力を合わせ、画期的成果につながった」と語る。

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