店舗網急拡大も人口減見据え、新たなコンビニ像を模索

国内で本格的なコンビニチェーンが誕生して15日で50年を迎える。豊富な品ぞろえや24時間営業など利便性の追求で消費者の心をつかみ、コンビニは「社会インフラ」として瞬く間に店舗網を拡大してきた。

» 2024年05月15日 05時04分 公開
[産経新聞]
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 国内で本格的なコンビニチェーンが誕生して15日で50年を迎える。豊富な品ぞろえや24時間営業など利便性の追求で消費者の心をつかみ、コンビニは「社会インフラ」として瞬く間に店舗網を拡大してきた。だが、近年は人口減少で懸念される需要減や人手不足が大きな経営課題となり、各社とも迫る危機を乗り越えるべく新たなコンビニの姿を模索している。

セブン−イレブン・ジャパンが2月にオープンした新型店舗の1号店。スーパーのような商品ケースに果物などが並ぶ=千葉県松戸市(福田涼太郎撮影)

 「何かお困りでしょうか」。無人店舗である東京都豊島区のローソン北大塚1丁目店では、セルフレジの操作に困っていると、傍らのモニターに映ったアニメの人物が話しかけてくる。

 このアバター(分身)による声かけは、自宅など店舗から離れた場所にいるアルバイト店員らが実際に行っているもの。身ぶりや細かい表情も連動して表現され、1人で数百キロ離れた店舗を含め複数店舗を受け持つことができるのが特徴だ。

 出勤が難しい障害者や子育て中の主婦らもアバター担当として勤務。通常の声かけ以外に、利用客がアバターとの会話を楽しむ姿もみられるという。現在、全国7店舗で導入。人手不足解消に向け「新しい働き方」(担当者)として期待する。


 現在主流の本部が個々の加盟店と契約するフランチャイズ(FC)方式の1号店を開業したのは、大手3社ではセブン−イレブンが昭和49年で最初だ。その後、50年にローソン、53年にファミリーマートが出店した。

 当時はダイエーが売上高で首位の百貨店を抜き去ったスーパー全盛の時代。だが、24時間営業や公共料金の収納代行、魅力的な商品開発など、社会のニーズに応えた利便性の追求により、コンビニは暮らしに欠かせない存在となっていった。

 直営方式よりも少ない資金で店舗網を拡大できるFC方式のもと市場も拡大。日本フランチャイズチェーン協会によると、主要コンビニの店舗数は今年3月時点で計約5万5000店、令和5年の市場規模は、百貨店業界の2倍に迫る約11兆6000億円に達している。

 ただ、人口減の影は確実に忍び寄る。人手不足の影響で24時間営業を取りやめる店舗が目立ち始めた。今も大手3社の業績に陰りは見えないが、今後は需要が頭打ちになることも予想される。


 セブン−イレブン・ジャパンは今年2月、コンビニとスーパーの要素を融合させた店舗面積が広い新型店舗の1号店を千葉県内でオープンした。新たに生鮮品を置き、店内で調理した食品も充実化。高齢者をはじめ近所で食事などの買い物を済ませたい消費者の需要を取り込みたい考えだ。同社の永松文彦社長は「次世代に向けた店舗のあり方を模索する」と話す。

 ファミリーマートはレジ上部にデジタルサイネージ(電子広告)を設置し、広告を流して収入を得る事業を進めている。現時点で設置店舗数は全体の6割となる1万店を突破。担当者は「人口減を見据えて収益の多角化を目指す」としている。

 一方、ローソンは現店舗に通信技術を掛け合わせた次世代コンビニの開発を進める。店内での品出しや調理をロボットが行うほか、保険や介護など幅広い分野の相談を受け付ける遠隔対応の窓口設置も想定している。

 コンビニ業界に詳しい法政大大学院の並木雄二教授は、客単価の向上策など店舗網の拡大に頼らない取り組みの進展を指摘。「これまでセブンが一つの見本を見せて他社がフォローするケースがみられたが、今回は三者三様の取り組みで、活性化の意味でも業界の将来性を感じる」と語った。(福田涼太郎)

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