職場のチーム力強化へ USJは謎解き、ドラクエも テーマパークが企業研修市場に続々参入

新型コロナウイルス禍を境に職場の人間関係が希薄化していることに悩む企業は多く、ニーズに応えることで利用客の満足度と単価の両方を上げる狙いがある。(田村慶子、福田涼太郎)

» 2024年05月20日 09時38分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 テーマパークが企業研修市場に相次ぎ参入している。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)は謎解きゲームを通じ、チーム力を高める企業研修サービスを始める。ネスタリゾート神戸(兵庫県)も昨春に参入した。新型コロナウイルス禍を境に職場の人間関係が希薄化していることに悩む企業は多く、ニーズに応えることで利用客の満足度と単価の両方を上げる狙いがある。

テーマパークが企業研修プログラムに力を入れている

 USJは「ジュラシック・パーク」を題材にした企業研修プログラムを28日に売り出す。新型コロナ禍後はチーム力向上を目的にした企業のパーク利用が増えてきたことから、人気が広がる謎解きゲームを生かした団体向けの新サービスとして投入した。

 参加者は4人ほどのチームに分かれスマートフォンを使って園内を巡り、謎を解いていくが、メンバー同士が力を合わせるのはもちろん、第三者の協力が必要な場面もあり、おのずとチーム力やコミュニケーション力が高まる仕掛けだ。

 プログラムの料金は入場券付きで1人1万2千円。1組40人から最大2千人まで参加が可能で、初年度は1万人の利用を目指す。USJの1日入場券は最高でも1万900円のため客単価アップが狙える。アトラクションの待ち時間もないため、満足度との両立も図れるとみている。

 担当者は「新プログラムを他のキャラクターで展開する可能性がある」とし、インバウンド(訪日客)向けに「プログラムの多言語化を検討している」と明かす。

 「国際ゲーム開発者協会日本」の南晃氏によると「採用活動や研修に謎解きゲームを取り入れる企業が増えている」という。

 人材派遣業のパソナグループも淡路島で運営する「ニジゲンノモリ」(兵庫県)で、人気ゲーム「ドラゴンクエスト」のアトラクションなどを使ったプログラムを令和3年5月に始めた。

 「ネスタリゾート神戸」も自然体験型の特色を生かして5年3月に導入。難易度の異なるアトラクションを制限時間内に効率よく体験できるかなどを競うもので「チーム力が高まった」と答えた利用者がアンケートで9割を超えており「周囲(の社員)と絆が深まった」など好評という。

 子供向けの職業体験型テーマパーク「キッザニア」でも東京と兵庫、福岡の全国3カ所にある施設で、企業や自治体などの研修を受け入れ、昨年度は計約20件に達した。

 キッザニアは多くの企業が出展する実際の職場を模した施設で、3〜15歳の子供たちがリアルに近い形で仕事やサービスを楽しみながら体験できる。

 運営する「KCJ GROUP」(東京)の担当者によると、さまざまな手法の研修がある中、実際にスタッフとして子供に接するパターンがある。仕事体験を通じて自発的に行動すること、それにより社会の一員として役割を担うことを子供に学んでもらうに当たっては、ときには忍耐力も必要だ。しかし、そうした作業は部下や後輩など対大人にも通じる部分があるという。

 観光社会学を専門とする立命館大学の遠藤英樹教授は「世代の垣根を越えた学びや、テーマパークの新たな楽しみ方になっている」と指摘する。(田村慶子、福田涼太郎)

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