大手企業が自前の投資ファンド「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」を設置し、革新性のある新興企業「スタートアップ」に投資する動きを強めている。
大手企業が自前の投資ファンド「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」を設置し、革新性のある新興企業「スタートアップ」に投資する動きを強めている。各分野で脱炭素や人工知能活用など、経営に求められる課題が多様化するなか、既存技術だけに頼らず、有望な新興企業を育てて課題解決につなげる狙い。国もスタートアップ投資への優遇税制を設置しており、官民を挙げた育成が進んでいる。
積水ハウスは今年2月に、スタートアップとの窓口となる子会社「積水ハウスイノベーション&コミュニケーション(イノコム社)」を設立し、4月には投資枠50億円のCVCを設置した。これまでに、建材への応用が期待される「二酸化炭素を吸着する素材」を開発した企業や、遠隔操作で建設現場を管理するシステムを手がける企業など計3社に出資した。
来月5日には東京・赤坂に交流拠点を開設する。都心のビルの23階、首相官邸を望む一等地に、セミナーができるスペース、ロビーや会議室を設けた。交流を通じ、有望企業にはCVCから出資も行う。
積水ハウスは大阪市に本社を置くが、イノコム社の辰井伸洋社長は今月、行われた説明会で「スタートアップは東京に圧倒的に多い。立地は大きな足掛かりになる」と説明した。
大和ハウス工業は今年1月、300億円の投資枠を設定したCVCを設立。同社は創業100周年を迎える令和37(2055)年までに、売上高を現在の倍となる10兆円とする目標を掲げている。既存領域以外への事業拡大・多角化に、スタートアップの力を活用する考えだ。
CVCは異業種との関わりの手がかりにもなる。三井不動産は自社のCVCを通じ、今年4月に核融合技術のスタートアップに出資した。核融合技術は、太陽の内部で起こっている粒子の反応を応用したもので、実現できれば脱炭素型の有力なエネルギー源となる。
三井不動産は建物の脱炭素化、省エネ化に取り組んでおり、安定的に電力供給を受けられるよう開発段階から関わりを強める。
このほか出光興産は今月、投資枠が最大100億円のCVCを設置したと発表。今後3年間で脱炭素技術などを手がける企業に出資する。火力発電会社のJERAも昨年CVCを立ち上げ、今月、水素製造技術を持つ米企業に出資した。
政府はスタートアップへの投資拡大を急いでおり、国内で3年度に8千億円台だったスタートアップへの投資規模を、9年度には10兆円近くに拡大する目標を掲げている。令和2年度の税制改正では、企業が新興企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合の優遇税制を創設している。(織田淳嗣)
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