日本ブランドが強み、ペットケアの海外進出が加速 国内は頭数減で市場は頭打ち

国内市場の頭打ちを背景に、ペットケア業界が海外市場への進出を急いでいる。新型コロナウイルス禍で在宅時間が延び、飼い主は増えたものの、世帯数とともに犬などの飼育頭数は長期的に減少傾向にあるためだ。

» 2024年09月09日 08時40分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 国内市場の頭打ちを背景に、ペットケア業界が海外市場への進出を急いでいる。新型コロナウイルス禍で在宅時間が延び、飼い主は増えたものの、世帯数とともに犬などの飼育頭数は長期的に減少傾向にあるためだ。所得水準が高まるアジア諸国ではペットに使うお金が増え、室内飼いが主流など日本との類似点も多い。日本ブランドの強みを生かし、成長産業になれるかの分水嶺にある。

高価格帯のペットフードを充実させた「コーナン東大阪菱江店」=8月、大阪府東大阪市(田村慶子撮影)

 大阪府東大阪市のホームセンター「コーナン東大阪菱江店」には、多種多様なペットフードが並ぶ。担当者は「プレミアム系の商品が人気」と、高価格帯のフードや用品が堅調と説明した。

 中でも米国などで認知が広まる「フレッシュペットフード」で商機をかけるのが犬猫用フードを製造・販売するバイオフィリア(東京)だ。フレッシュペットフードとはペットを家族の一員と考える、いわゆる「ペットの家族化」に応えて、人間用の品質を念頭に保存料など添加物を加えないペットフードのことで、矢作裕之取締役COOは「グローバルに戦える分野で、他社に先んじて実績を積み上げることが重要」と意気込む。

 同社は国産食材を使った犬用の完全栄養食「ココグルメ」で3月に台湾、7月には香港への輸出に乗り出した。従来のドライ型フードはグローバル企業が国際市場を席巻している一方、フレッシュペットフードをグローバル展開するメーカーはまだ少ない。今後は欧米市場への参入も視野に入れ、2026年度に計画する売上高100億円の約1割を輸出で稼ぐことを目指す。

 一方、ペットフードから犬猫の排泄ケア用品まで手掛けるユニ・チャームも「成長事業として注力する」と力を込める。市場縮小にある生理用ナプキンなどに使われる素材の加工技術は排泄ケア用品に応用でき、自社の強みが生かせるからだ。中国やタイで製造しているが、犬種や年齢などきめ細かなフードの品ぞろえも武器。アジア市場を狙い「将来は日本と同様にペットの高齢化を迎える」と犬猫のシニア市場も見据える。

 国内企業の輸出熱の背景にあるのは、国内市場の頭打ちだ。新型コロナ禍で飼い主は増えたものの「長期的にみると犬や猫の飼育頭数は減っている」と、一般社団法人ペットフード協会(東京)の児玉博充会長は指摘する。「この15年間で犬の飼育頭数はほぼ半減。猫も実は1割減った。それも小型犬や猫が多く、食事量が少ないためフードの工場稼働が落ちている」といい、国内市場の縮小は不可避。その分、輸出額は増えており、農林水産省の調査によると23年のペットフード輸出額は約79億円と10年間で約11倍となった。

 こうした中、ジェトロも中国市場などで日本ブランドのPRに力を入れている。23年から中国でのペット用品の専門見本市などに日本ブランドを出品。今年11月5〜10日に上海市で開かれる「第7回中国国際輸入博覧会」では、日本展示ブースとして初めてペット関連商品に特化する。ジェトロ上海事務所の高山博副所長は「日本にとっては大きなビジネスチャンスだが、ペット市場の成長に着目しているのは世界も同じ。日本企業は早く手を打つべきだ」とする。

 英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると、23年の日本のペットケア市場は前年比7.2%増の8107億円と18年以降の年平均成長率は4.5%で拡大し続けているが、24〜29年の今後5年間は0.9%と成長鈍化を見込む。同社の担当者は「現状は高価格帯の成長に支えられているが、度重なる値上がりで価格の安い商品を選ぶ飼い主が増えると、数量増も金額増もかなえられなくなる可能性がある」とし、海外市場で売り上げを確保する必要性を強調している。(田村慶子)

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