ロボットが物流滞る「2024年問題」に対処 自宅でフォークリフトの遠隔操作も

物流業界ではドライバーの残業規制で物流が滞る「2024年問題」や人手不足が大きな課題となっている。

» 2024年09月12日 17時30分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 アジア最大級の物流機器・設備の展示会「国際物流総合展」が10日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。物流業界ではドライバーの残業規制で物流が滞る「2024年問題」や人手不足が大きな課題となっている。倉庫内の業務の効率化が運転手の荷役や荷待ち時間の短縮につながることから、作業を自動化・省力化する最新のロボットや機器などの展示が目立った。

NECとNIPPON EXPRESSホールディングスは、遠隔操縦によるフォークリフトの荷下ろし作業のデモを披露した=10日、東京都江東区(黄金崎元撮影)

 国内外の580の企業や団体が出展した。フォークリフトにカメラやセンサーを取り付け、遠隔地から操縦できる技術を展示したのはNEC。隣のNIPPON EXPRESSホールディングスのブースにあるフォークリフトを遠隔操縦し、荷物の積み下ろしをするデモを披露した。

 自動と遠隔操縦のハイブリッドで使えるように開発を進めており、来年度の販売を目指す。NECの米竹淳一郎シニアプロフェッショナルは「倉庫が遠隔地にあり、人材採用に苦労している企業も多い。そうした課題を解決したい。将来的には家で作業できるようにしたい」と話した。

「荷待ち」短縮

 物流システム大手のダイフクは、さまざまな形状の商品を正確に、高速で仕分ける無人搬送ロボットを出展した。台車上部のトレイに商品を投入すると、分速180メートルの速さで指定された箱の前に移動。トレイが傾き、商品が仕分けられる。1時間当たりトレイを1万回傾けられるという。

さまざまな形状の商品を正確、高速で仕分けるダイフクの無人搬送ロボット=10日、東京都江東区(黄金崎元撮影)

 多品種の商品を取り扱うコンビニエンスストアやスーパーなどの物流作業を効率化できるといい、「2024年問題の解決策として運転手の荷待ち時間の短縮に貢献できる」(システムソリューション1部の芝村二郎第2グループ長)。

 ヤマハ発動機が出資するイブ・オートノミー(静岡県磐田市)は工場や倉庫向けの無人搬送車を出展。自動運転のソフトウエアを手がける新興企業、ティアフォー(名古屋市)と共同開発した。台車を付けると最大1.5トンまで運べる。

ヤマハ発動機の子会社イブ・オートノミーの無人搬送車。台車を付けると最大1.5トンまで運べる=10日、東京都江東区(黄金崎元撮影)

ゴムの吸着力

 タイヤ大手、ブリヂストンの社内ベンチャー、ソフトロボティクスベンチャーズ(東京都中央区)はロボットハンド「TETOTE and(テトテ アンド)」を初公開した。

国内に流通する数万点の日用品の取り出し作業ができるソフトロボティクスベンチャーズのロボットハンド「TETOTE and(テトテ アンド)」=10日、東京都江東区(黄金崎元撮影)

 タイヤやホースの製造ノウハウを生かしたゴム人工筋肉4本の真ん中に吸着パッドを搭載。従来品を上回る吸着力があり、国内に流通する数万点の日用品の取り出し作業が可能に。「日用品関連の企業への導入を促進したい」(同社の山口真広主幹)という。一方、アムンゼン(横浜市)は吸い込み型モーターを使い、重量物を吸着して搬送する装置「イージーリフト」を展示した。指先でレバーを上げ下げするだけで、女性や高齢者でも簡単に重い荷物を運べる。

女性でも簡単に重量物を吸着して搬送できる装置「イージーリフト」=10日、東京都江東区(黄金崎元撮影)

 矢野経済研究所の調査によると、国内の自動配送ロボットやドローンを活用した物流市場規模は、令和7年度に約23億円、12年度に約198億円に拡大すると予測されている。現在は実証や法整備が進められ、7年度から本格的に市場が立ち上がるとしている。物流業界が深刻な人手不足に直面する中、最新ロボットが活躍する場は広がりそうだ。展示会は13日まで。(黄金崎元)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆