リーダーと聞くと、ぐいぐい引っ張る「俺についてこい!」や、縁の下の力持ちをイメージする人が多いようだが、優れたリーダーは、そのいずれにも属さないものだった。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
「なんで、あの人は魅力的なんだろう……」
そんな風に思ったことはありませんか?
求められるリーダー像を考えたとき、さまざまなイメージが沸くと思います。
これまで多くの企業でリーダー育成や組織風土変革の支援をしてきました。その中で、優れたリーダーには、共通項があることが分かりました。
一般的には、リーダーと聞くと、ぐいぐい引っ張る「俺についてこい!」という親分肌のスタイルや、みんなの縁の下の力持ちになるような底上げ型のスタイルをイメージする人が多いようです。しかし、私が見てきた優れたリーダーは、そのいずれにも属さないものでした。いえ、正確にいえば、どんなリーダーシップのスタイルを取るかは関係なかったのです。
では、優れたリーダーは、どんなリーダーシップを発揮していたのか?
それが、シェアリング型だったのです。
シェアリング型のリーダーとは、組織の理念を自分事として捉えることができ、かつ、自分の言葉で自分の感情を素直に自然に分かち合うことができるリーダーのことです。もしさらに、シェアリングリーダーを定義づけるとすれば、「想いを共有し周囲に良い影響を与える人」となります。
つまるところ、「人は数字で動かない」ということです。KPIやPDCAサイクルといった数値管理、行動管理で人は動機付けされないのです。
頭で「やったほうがいい」と分かっていても、大嫌いなリーダーから指示されたら嫌だなと感じて動きたくないのです。一方、頭で「無理かもな」と思っていても尊敬し信頼するリーダーから指示されたら、「まずはやってみるか」と思うものです。きっと、皆さんも経験があるでしょう。結局、仕事は関係性で決まっていきます。
組織風土という言葉がありますが、組織風土とは人間関係で出来ていると考えています。つまり、信頼関係があれば雰囲気は良くなるし、なんでも言い合えるムードがあれば新しいアイデアも出しやすくなります。
一方で、何か新しいことに挑戦して失敗したとき「ほら見たことか」とか「最初から、ダメだと思ってたんだよね」などと言われたら、二度と挑戦なんかしたくないと考えるでしょう。
しかし、失敗しても「ナイスチャレンジだったね!」「いい経験になったね。次は○○を試してみたらどう?」などと言われたら、また挑戦しようという気持ちになるものです。そのため、リーダには「関係の質」を楽しみながら醸成していくことが求められます
リーダーは人の心に火をつける存在である必要があります。私はよく、情熱は熱伝導すると伝えていますが、リーダーは情熱をもって、その情熱の炎でメンバーに火をつけていってほしいのです。
人は情熱ある人のそばにいたいし、情熱のある人になりたいものなのです。昨今、若年層を中心に『鬼滅の刃』というアニメが大流行しました。その中に出てきた煉獄さんという人気キャラクターがいます。この煉獄さんのセリフの中でもっとも人気のある言葉は「心を燃やせ」だったそうです。
冷めて白けたリーダーには誰も付いていきません。熱い情熱を持っているリーダーの想いに触れたとき、周囲のメンバーにその熱が熱伝導して、「やってみるか」と気持ちを奮い立たせるものです。
そのため、私は「リーダーは400度熱で語れ」と伝えています。これは、熱量は人を介すごとに低くなってしまうから、多くの人を巻き込みたかったらリーダーは熱量高く400度で伝えましょうということです。
例えば、リーダーが400度で語ったとき、その話を聴いたメンバーの熱量は200度になり、そのメンバーから話を聴いたメンバーは100度になります。ところが、もしリーダーが40度の熱量で話したとき、聴いた人は20度、その次に聴いた人は10度になります。これでは人は動きません。心を燃やすことはできないのです。
私たちは一人で大きな仕事をすることはできません。いかに多くの人を巻き込んでいくか? その巻き込む力がリーダーには求められています。
リーダーが失敗をどう捉えるか?でチームの質が大きく変わります。
成功の対義語は失敗と捉えるリーダーが多いようですが、これはものの見方が狭いと言わざるを得ません。結論から言えば、成功の対義語は、「何もしないこと」です。
何かに挑戦して失敗したとき、何も残らないのでしょうか? 違います。失敗しても必ず残るものがあります。それが「経験」です。そして、この経験を積み重ねることでしか人は成長しません。
もし、部下や後輩が何かに失敗した場合、非常に効果的な質問の仕方があります。それは「この経験から何を学んだと思う?」というものです。部下や後輩本人の内省を促し、失敗を今後の教訓に変えてしまう魔法の質問です。
何かに失敗して成果を出すことはできなくても、かならず成長はしているのです。かつて持てはやされた「成果主義」ではなく「成長主義」で仕事に取り組むことができれば、人はどんどん成長していきます。その結果、行動もどんどん変容していくのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授