トランプ関税の日本企業への逆風が懸念される中、人工知能(AI)とITを活用した“次世代版カイゼン”で経営強化に成功した自動車部品メーカーがある。愛知県碧南市に本社を置く旭鉄工だ。
トランプ関税の日本企業への逆風が懸念される中、人工知能(AI)とITを活用した“次世代版カイゼン”で経営強化に成功した自動車部品メーカーがある。愛知県碧南市に本社を置く旭鉄工だ。生産性を大きく高め、10年前から売上高は11億円、基準内賃金は17%増。木村哲也社長は、日本企業は「変わる勇気」を持ち改革を進める覚悟が必要だと訴える。
エンジン用部品をつくる同社の工場。縦長のディスプレーには、刻々と変わる製造時間の間隔や稼働率、消費電力などの数値が生産ラインごとに映し出されていた。
IoT(モノのインターネット)を使い工場の稼働状況を一目で、リアルタイムで観察できるシステム。起きた問題にすぐ対処できる。2013年にトヨタ自動車から転籍し16年に社長に就いた木村氏が作り上げた。
「デジタルの導入は人を楽にするため。データは集めるだけでなく、実際に行動を変える経営につなげることが必要だ」と木村氏は話す。
デジタルの利点は問題を把握して対策し、効果を確かめ次の行動につなげるサイクルを高速で進められることだ。
データを大量・瞬時に集め、見える化。無駄な電力消費をなくすさいは「生産に使われた電力、生産を意図せず設備を止めたのに無駄に使われた電力などを色分けして見られるようにした」。停止中の設備も電力を使っていることなどが一目でわかりカイゼン。「社員は自分が提案したカイゼンの効果もデジタルで見え、面白くなる。カイゼンを続けやすくなる」。
さらに、木村氏が乗り出しているのがAIの戦略的な活用だ。IoTで集めた200以上の製造ラインの膨大なデータをAIが毎日巡回。問題点があれば指摘し対応をアドバイスする。今開発しているのは、作業中の人の動画を解析し、無駄な動きの指摘や改善のアドバイスができるAIだ。
21年間、トヨタで開発部門中心に勤務し、カイゼンも学んだ木村氏からみると、社長後継含みで移った旭鉄工には多くの無駄があった。高価格の備品を同じ取引先から買い続けるなど「変えないことが正義だった」。
抵抗もあったが改革を次々実行。靴箱に刃物を入れられもしたが、それでも改革を進めたのは、人口減などで環境が変わる中、赤字体質の旭鉄工は「変わらなければ取り残される」という危機感があったからだ。
そして木村氏は「危機感がない日本企業は多い」と話す。経営者に要るのは、自らが「IT人材」になり改革を進める覚悟だとする。
足元では米国が高関税政策を打ち出している。4、5月には自動車と同部品に各25%の関税が発動された。旭鉄工はトヨタなどに納入。影響は不透明だが「今までの取り組みを関税の有無にかかわらず続ける」とする。
環境の悪化に負けず、日本企業は生き残れるのか。旭鉄工の取り組みも、ヒントの一つとなりそうだ。(山口暢彦)
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