睡眠の質をあげることがうつリスク削減&生産性向上につながる――睡眠を改善するための超熟睡トレーニングITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

日本人の多くが抱える睡眠不調の問題。健康リスク、うつリスクを高める睡眠不調を自力で改善する方法がある。それが睡眠コーチの角谷リョウさんが提唱する「超熟睡トレーニング」だ。

» 2025年07月09日 07時06分 公開
[松弥々子ITmedia]
『超熟睡トレーニング』

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に睡眠コーチの角谷リョウさんが登壇。16万人以上の“日本人”のデータを集め、睡眠改善をしてきた「上級睡眠健康指導士」の角谷氏が、2024年10月に上梓した著書『超熟睡トレーニング』に基づき、自力で睡眠を改善する方法について講演を行なった。

睡眠不調により、日本の経済損失は20兆円に! 睡眠の質の改善は急務

睡眠コーチの角谷リョウさん

 日本人の睡眠時間は少ないといわれるが、平均睡眠時間は7時間22分となっている。OECD加盟諸国の平均睡眠時間は8時間25分であり、日本人の睡眠時間はOECD加盟諸国より1時間ほど睡眠時間が少ないといえる。しかし、厚生労働省が2023年に改定した「健康づくりのための睡眠ガイド」では成人男性に推奨する睡眠時間は6時間以上となっている。また、60歳以上の高齢者は床上時間が8時間以上となると死亡リスクが高まるため、8時間以上の睡眠は避けるべきとしている。

 「睡眠時間が多ければいいと思っている人も多いのですが、それは違います。日本人が抱えている睡眠の問題は、時間の短さではなく“睡眠の質”です。日本人は“睡眠の質”が低く、そのため睡眠不調を抱えており、睡眠満足度は世界ワースト1位となっています。この睡眠不調を原因とする経済損失は、20兆円に及ぶといわれます」(角谷氏)

 睡眠の質とはどういうものなのだろうか。睡眠には、レム睡眠・浅いノンレム睡眠・深いノンレム睡眠の3種がある。このなかで重要なのが、脳波の波長が長いデルタ波となり、リラックスして成長ホルモンも分泌される、深いノンレム睡眠だが、この深いノンレム睡眠が取れてない人が非常に多い。“睡眠の質”が良いという場合、以下を満たすことが必要になる。

1、深いノンレム睡眠が十分取れている

2、3つの睡眠がバランスよくリズムになっている

3、睡眠中に中途覚醒が少ない

 「質の良い睡眠を取れている人は、最初の睡眠が一番深く、だんだん浅くなっていきます。いかに最初に深い睡眠に入るかが重要です。最初に深く眠り、だんだんと浅い睡眠になり、途中覚醒もない。こういう睡眠を取れれば体は回復しますし、熟睡できるでしょう」(角谷氏)

レム睡眠・浅いノンレム睡眠・深いノンレム睡眠

 角谷氏によれば、日本人の睡眠の質が悪い理由は、大きく2つあるという。それが「いびき&睡眠時無呼吸」と「不眠症」だ。6時間以上寝ていても、昼間に眠くなるという人は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の可能性が高い。なんと、成人男性の4人に1人が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」であるといわれている。「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」となると寝ていても疲れが取れず、交通事故を起こすリスクは約7倍、高血圧や糖尿病になるリスクも約2倍となり、8年後生存率も63%まで下がってしまう。

 「SASは絶対に改善してください。寝ている方が疲れてしまうし、さまざまなリスクが高くなり、寝具にお金をかけたり、何時間寝たりしても不調は解決しません。放置せずに、ちゃんと病院に行って検査をすることが重要です」(角谷氏)

5つのステップでいびき&睡眠時無呼吸を改善し睡眠の質を向上

 日本では、まだまだ睡眠を専門とする睡眠クリニックは少ない。しかし、いびきや無呼吸症候群の検査は、日本中の多くの病院で検査が可能となっている。睡眠に問題を抱えている人が検索をすると、80〜90%の高確率で「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と認定され、CPAP(シーパップ)での治療を進められる。

 CPAPとは、睡眠中、鼻に装着したマスクから、機械で一定の圧力をかけた空気を気道に送り込み、気道を広げて無呼吸を防止するという治療法になる。改善効果は100%といわれ、日本では保険が適用されて、毎月一定の金額で自宅に機器をレンタルでき、利用することができる。

 「CPAPを使えばSASの改善効果は高いですが、本質的な睡眠改善にはなりません。しかし、日本人のいびきやSASはトレーニングによって自力で改善しやすい傾向があります。それを知らずにCPAPを始めてしまうと、半永久的にサブスクで利用し続けることになるわけです。であれば、CPAPを使いながら、自力でトレーニングして睡眠の質をあげ、SASを本質的に改善していくのがベストだと私は考えています」(角谷氏)

いびき・無呼吸を改善する5つのステップ

STEP1 計測する

STEP2 CPAP or マウスピースをしてみる

STEP3 痩せる

STEP4 舌根トレーニングをする

STEP5 マウステープで鼻呼吸トレーニング

STEP6 に戻って効果測定&再チャレンジ

 「まずはいびき・無呼吸を計測して見える化し、対策することです。その後、効果が高く自分に合いそうな改善法を行い、定期的に改善度合いを計測していく。これができれば、改善していきます」(角谷氏)

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