「経営を動かす説明力を鍛えつつ、今も自らログ解析」 - みんなの銀行CISO二宮氏セキュリティリーダーの視座(1/3 ページ)

日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」の守りの要、CISO 二宮賢治氏。メインフレーム時代から約35年のキャリアで培ったのは、経営層への「説明力」と、今も自らログを解析する「現場感」だ。

» 2026年01月15日 08時00分 公開
[星原康一ITmedia]

 日本初のデジタルバンクとして、スマートフォン完結型の銀行サービスを展開する「みんなの銀行」。その堅牢なシステム基盤とセキュリティを統括するのが、みんなの銀行上席部長CISO 兼 ゼロバンク・デザインファクトリー執行役員CISOの二宮賢治氏だ。

 メインフレーム全盛期からインターネットの黎明期を経て、現在はAIの波に対峙する。約35年にわたるエンジニア人生で培った「セキュリティの感覚」と、CISOとしての責務について話を聞いた。



二宮賢治(NINOMIYA Kenji)
―― みんなの銀行 上席部長 CISO 兼 ゼロバンク・デザインファクトリー 執行役員 CISO

二宮賢治 Photo by 山田井ユウキ

 1990年富士通入社。金融SEとしてオープン系システムやインターネットバンキングの立ち上げに従事する。2000年のジャパンネット銀行(現PayPay銀行)開業プロジェクトを経て同行へ出向・転籍。2020年、みんなの銀行設立準備会社に入社し、現職。



メインフレーム全盛期に「オープン系」へ、激動の時代が育てたキャリア

――まず、これまでの経歴について詳しく教えてください。スタートは1990年、富士通に入社したそうですね。

二宮氏: バブル崩壊前夜の1990年に入社し、金融担当のシステムエンジニア(SE)として配属されました。当時の銀行システムといえば、堅牢なメインフレームが絶対的な主役の時代です。しかし、世間では「オープンシステム」という言葉が流行りはじめ、PCやUNIXワークステーションを使った新しいシステム構築の波が押し寄せていました。

 私は運良く、入社直後からその「オープン系システム」を推進する部隊に配属されました。金融というミッションクリティカルな領域において新しい技術を使ってシステムを作る。そんな過渡期の最前線に身を置けたことが、エンジニアとしての基礎を形作ったと思います。

――その後、インターネットの黎明期と共にネットバンキングに関わっていくわけですね。

二宮氏: 1995年頃からインターネットが爆発的に普及し始め、「銀行もインターネットでサービスを提供すべきだ」という機運が一気に高まりました。私は90年代後半に、ある地方銀行のインターネットバンキング立ち上げに携わりました。当時はまだ前例も少なく手探りの状態でしたが、その経験が買われ、2000年に開業する日本初のインターネット専業銀行、ジャパンネット銀行(現PayPay銀行)の立ち上げプロジェクトに参画することになりました。

二宮賢治 Photo by 山田井ユウキ

トラブル対応から「中の人」へ、そしてデジタルバンクへの挑戦

――どのような経緯でベンダー側からユーザー側になったのでしょうか。

二宮氏: 開業直後は、やはりさまざまな問題が発生するものです。私は当時ベンダーの立場でしたが、システムの立て直しと体制強化のために、銀行に出向することになったのです。現場で泥臭い対応を続け、銀行のシステム基盤を守り抜く日々を送るうちに、そのまま銀行側へ転籍することになりました。

 そこからはインフラ基盤の構築・運用を中心にキャリアを重ねました。インターネットに直結したシステムを扱っていたため、外部からの攻撃や不正送金対策など、セキュリティの実務も自然と業務の一部になっていきました。その後、2010年代に入ってサイバー犯罪が深刻化したことで専門部署が立ち上がり、私がその専任担当になったという流れです。

――ジャパンネット銀行のセキュリティは設計が難しくなかったでしょうか。

二宮氏: 当時はセキュリティの教材がほとんどありませんでしたが、他業種ではEC等のインターネットシステムもあったので、そちらのナレッジを持つ富士通社内のサポートチームとも連携しながら情報収集していました。

 ただし、実践的なスキルは、自分で手を動かして磨いていました。当時は社内で割り当てられたグローバルIPアドレスを使って、自分のデスクのマシンでDNSサーバやWebサーバ、メールサーバを立ち上げていました。自分でサーバを構築し、設定し、デバッグしながら仕組みを理解していくと、「ここをこう設定できるということは、逆にここを突けば情報を取れてしまうな」ということが肌感覚で分かってくるんです。「作れるということは、壊し方も分かる」。この時に体得した感覚が、今の私のセキュリティ観の原点になっています。

二宮賢治 Photo by 山田井ユウキ

――そして2020年、現在の「みんなの銀行」へ移ります。ここにはどのような思いがあったのですか。

二宮氏: ジャパンネット銀行時代の同僚であり、みんなの銀行(当時は設立準備会社)に移っていた現CIOの宮本から「一緒に新しいデジタルバンクをやろう」と声をかけられたのがきっかけです。

 再度ゼロから新しい銀行、それもクラウドネイティブなデジタルバンクを作るという挑戦に魅力を感じました。そうして2020年に転職し、現在はCISOとしてこの新しい銀行の守りを統括しています。

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