AIファースト時代に求められるのは地域に根差した人材育成とエコシステムの構築SENDAI IBM DAY 2026(1/2 ページ)

AIの活用や最先端技術の実装を積極的に進める「AI-Ready 都市・仙台」の実現に取り組んでいる仙台市では、AIネイティブな人材育成と産官学によるエコシステムの構築が喫緊の課題。

» 2026年03月19日 07時04分 公開
[山下竜大ITmedia]

 東北の中核都市で、研究機関、企業、自治体の連携により地域社会と経済の発展に取り組む仙台市。先端技術を社会に生かす実証フィールドとして注目を集める仙台で日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が開催した産官学パネルディスカッションに、仙台市、東北大学、日本IBMの有識者が登壇。AIや半導体、量子コンピュータなどの先端テクノロジーを活用した今後の可能性などを議論した。

先進技術により仙台・東北発の新しい価値、イノベーションを創出

仙台市経済局 イノベーション推進部 部長 髙橋勝美氏

 「AIファースト時代における先端テクノロジーの社会インパクト・地域共創のあり方」をテーマに開催された産官学パネルディスカッションでは、まずは仙台市経済局 イノベーション推進部 部長の髙橋勝美氏が仙台市の取り組みについて紹介。仙台市では、2030年度に総生産の過去最高額の更新を目指す経済戦略「仙台経済COMPASS」を推進し、以下6つの重点プロジェクトに取り組んでいる。

1、企業の変革に向けた「戦略的ダイバーシティ」の推進

2、学都の「知の力」を活かしたイノベーション創出

3、地元中小企業の変革と成長促進

4、「防災環境ビジネス」の推進

5、DXによる経済成長と暮らしやすさの向上

6、外貨獲得のための「エリア価値」の向上

 例えば、学都の「知の力」を活かしたイノベーション創出では、学術研究機関の集まる仙台の強みを生かし、研究開発型のスタートアップの推進、および世界最先端のリサーチコンプレックスを目指し、その形成を進めている。また「防災環境ビジネス」の推進では、AIなどの先端技術を活用し、防災の課題を解決する新たなビジネスを創出している。さらにDXによる経済成長と暮らしやすさの向上では、地域企業のデータ利活用の促進、デジタル人材の育成、先端デジタル技術の地域企業への導入を推進している。

 「イノベーション推進部では、世界最高水準の分析能力を有する3GeV高輝度放射光施設『NanoTerasu(ナノテラス)』の利活用、国内外の大学・研究機関や企業の研究開発部門が集積し、新たな価値創造の場となるリサーチコンプレックス形成、およびスタートアップ支援などの取り組みにより、仙台・東北発の新しい価値、およびイノベーションの創出を目指しています。こうした取り組みでは、AIや量子コンピュータ、半導体などの先端技術の利活用が重要になります」(髙橋氏)

国際的な人材を育成し、世界に輩出するための取り組みを推進

東北大学 未来科学技術共同研究センター/大学院工学研究科電子工学専攻教授 黒田理人氏

 東北大学では1907年の建学以来、「研究第一主義」「門戸開放」「実学尊重」の理念を掲げ、より国際的な人材を集め、教育して世界に輩出するための、さまざまな取り組みを推進。例えば2024年には、政府から国際卓越研究大学の第1号に認定され、研究者処遇の拡充や新たな大学の姿の実現を目指している。

 東北大学 未来科学技術共同研究センター/大学院工学研究科電子工学専攻教授である黒田理人氏が率いる研究チームでは、半導体や集積回路分野の研究開発を行っており、同センターが取り組むプロジェクトの一例を次のように話した。

 「高速度ビデオカメラシステム向けのイメージセンサを研究チームの学生が設計し、島津製作所により高速度ビデオカメラ『Hyper Vision HPV-X3』として実用化されています。世界最速の性能を発揮する半導体チップは宮城県産で、ラピスセミコンダクタの宮城工場とのコラボレーションで製造されています」

 また同氏は、世界最先端のロジック半導体の開発、製造を目指す企業であるRapidusが創業する以前より、取締役会長の東哲郎氏、代表取締役社長兼CEOの小池淳義氏が進めていた有志のグループ、Mt. Fuji Projectに参画。

 日本IBM 執行役員 研究開発担当兼東京基礎研究所 所長の福田剛志氏は「日本IBMでは、Rapidusを通じて最先端半導体の技術提供という形で半導体産業エコシステムを支援しており、その中には宮城県の企業も含まれています。Rapidusは、世界でもユニークな取り組みとして認知されており、宮城県は装置・素材メーカーの集積地として2025年以降、その存在感をさらに強めています」と話す。

 さらに東北大学では、開発の拠点として「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC:Leading-edge Semiconductor Technology Center)」に参画し、先端半導体技術の研究開発、新たなアプリケーションやユースケースの創出とともに、半導体人財の育成を進めることで、日本の半導体産業の自律的な成長と持続可能な発展を目指している。

 そのほか「エッジAI半導体」の設計、製造プロジェクトも推進。科学技術振興機構(JST)の公募事業「次世代エッジAI半導体研究開発事業」の「3D集積技術」に東北大学の提案が採択され、北海道大学、東京大学、熊本大学、および民間企業7社と共同で、エッジAI半導体などの実現に必要な技術の開発と社会実装を目指している。

 「これまでも研究室と地域企業との共創を進めてきましたが、この取り組みをさらに強化し、地域の課題を解決するための共創の場の提供、技術やソリューションの展開などを進めていきます。東北大学では、産学共創の更なる振興・発展を目指し、2021年より『共創研究所』を創設しており、すでに40件を超えています。今後さらにこの枠組みを拡大し、研究の入り口のハードルを下げていきたいと考えています」(黒田氏)

左から、日本アイ・ビー・エム・デジタルサービス 古長由里子氏、仙台市髙橋勝美氏、東北大学 黒田理人氏、日本IBM 福田剛志氏
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