JR東日本では、設備や作業の第一線にいる社員が日々の仕事で直面した課題や困りごとを自ら解決するために、タイムリーな技術開発に取り組む制度を、会社発足後の1988(昭和63)年にスタート。安全性や生産性の向上、コストダウンなどの成果を生み出してきた。
駅や線路の現場で生まれたアイデアが、鉄道の安全を支え、利用者の快適さを高め、さらに業界の外へも広がっていく―。そんな現場発の技術を世界に届けようと、JR東日本は新ブランド「GENICHI(げんいち)」を立ち上げた。コンセプトは「ゲンバ発、セカイ行き」。8日開設した公式サイトには、長年積み重ねてきた開発品が並び、その知恵の豊かさが浮かび上がる。
JR東日本では、設備や作業の第一線にいる社員が日々の仕事で直面した課題や困りごとを自ら解決するために、タイムリーな技術開発に取り組む制度を、会社発足後の1988(昭和63)年にスタート。安全性や生産性の向上、コストダウンなどの成果を生み出してきた。
累計の開発件数は約1万4500件。年平均で約380件にのぼり、ほぼ毎日のように新しい工夫が積み上がってきた計算だ。近年は約3割が実用化された。
JR東日本の喜勢陽一社長は8日の会見で「こうした成果を鉄道業界の中だけにとどめず、より広く社会に届けるためだ」と新ブランドを立ち上げた狙いを強調。同社公式サイトでは開発品を紹介し、一部商品は同社グループの通販サイト「JRE MALL」で一般販売も始めるという。
象徴的な存在の一つが「踏切警報灯(全方向形)」だ。従来の踏切警報灯は、一方向から見てもらうことを前提としており、道路の形状が複雑な場所では複数設置する必要があった。
こうした課題に対し、開発品は全方向、360度から目視でき、警報灯の集約も実現した。安全性の向上とコストダウンの両立にもつながった。この製品はJR各社ほか、多くの鉄道会社で導入。2009年と2021年にはグッドデザイン賞も受賞した。
鉄道会社の技術開発というと、大規模なシステムや最先端装置に目が向きがちだ。だが、新ブランドで紹介される技術は、現場で働く人たちが「ここが不便」「ここに危険がある」と感じたことを、地道に改良し、広く世の中に役立つ形にしてきた成果。そこに新ブランドの面白さがある。
対象は設備だけではない。安全、サービス、生産性と、現場の悩みがそのまま製品の出発点になっている。
たとえば「ファーストリペア」は、雨天や低温時でも応急処置ができるテープだ。駅ホームの点字ブロック材に不具合があった場合、表面がぬれていると補修に時間がかかる。だが、この製品はより迅速な応急対応を可能にした。悪天候でも作業しやすく、利用者の安全確保にもつながる。
一方、「ハレユカ」は、雨の日でも床に水たまりができにくい排水機能付きのシステム床だ。駅コンコースでは、直接降り込む雨や傘で持ち込まれた雨水によって、床面に水たまりができることがある。ハレユカはこれを改善し、連日の雨でも歩きやすい環境を保とうとした技術で、利用者サービスの向上を強く意識した開発品といえる。
「防鼠(ぼうそ)シート」もユニークだ。信号機器には多くのケーブルが接続されているが、鼠によるかみつき被害が起きることがある。開発品は、とうがらしの辛み成分であるカプサイシンを使って忌避効果を持たせたシートで、ケーブル被害の防止に役立てる。鉄道の安定輸送を守るための工夫だが、インフラ設備全般にも応用の余地がありそうだ。
主な開発品は、5月27〜29日にインテックス大阪(大阪市住之江区)で開催される「第2回鉄道技術展・大阪2026」(産経新聞社主催)でも展示予定。就職活動中の大学生や専門学校生、鉄道業界に関心を持つ人にとっても新ブランドは興味深いはずだ。(高橋天地)
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