仕事も家族も再定義する 首都圏のエグゼクティブが「地方」を選ぶ理由今、エグゼクティブが「地方」で描くキャリア戦略(1/2 ページ)

役職定年や家庭の事情をきっかけに、キャリアを見直すエグゼクティブ人材が増え、次の活躍の場として地方企業に注目が集まっている。なぜ今、地方なのか――そこに広がる可能性と現実に迫る。

» 2026年05月13日 08時00分 公開
[江口勝彦ITmedia]

 近年、エグゼクティブの地方転職が増えています。エグゼクティブとは、企業の経営課題を解決する力を持ち、それに見合う報酬を得ている人材のことです。役職では、特定分野の統括責任者であるCXOなどが当てはまりますが、「会社の要となる人材であるかどうか」がエグゼクティブの目安となります。

 かつては「地方にエグゼクティブが活躍できる場は少ない」というイメージが一般的でしたが、最近ではこの前提は変わり始めています。全3回の連載となる本記事(第1回)では、その背景にある地方企業の変化やエグゼクティブの地方転職を阻む壁、地方で活躍するための心得を解説します。

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なぜ今、地方企業はエグゼクティブを求めているのか

 エグゼクティブの地方企業への転職が増えているのは、単なる人材の流動化ではなく、地方企業の変化が要因として挙げられます。

 一つ目に、事業承継フェーズにある地方企業の増加があります。

 地方には、50年や100年続くオーナー企業が数多く存在しますが、現在は2代目・3代目へと経営を引き継ぐタイミングに差し掛かっている企業が多く見られます。

 後継者の多くは社外で経験を積み、広い視野を持って戻ってくる一方で、将来のビジョンと現状とのギャップに直面するケースも少なくありません。その差分を埋め、変革を推進する存在として、外部からエグゼクティブを迎え入れる動きが活発化しています。

 二つ目に、株式上場を目指す、あるいはすでに上場を果たした地方企業の増加が挙げられます。

 企業規模の拡大に伴い、コーポレートガバナンスや内部統制の整備といった新たな経営課題が生まれます。しかし、地方では上場企業での実務経験を持つ人材が限られているため、首都圏で経験を積んだエグゼクティブ層へのニーズが高まっています。

 三つ目に、DX(デジタルトランスフォーメーション)や人的資本経営といったテーマへの関心の高まりがあります。

 これらのテーマは単なる業務改善にとどまらず、経営そのもののあり方を変える取り組みであり、実行においては高度な知見と推進力が求められます。そのため、経営に近い立場で変革を牽引できるエグゼクティブの必要性がより一層高まっています。

 このように、事業承継・上場への対応・経営改革という要因が重なり、地方企業におけるエグゼクティブの需要は着実に拡大しています。そしてその需要こそが、エグゼクティブの地方転職を後押しする大きな原動力にもなっているのです。

地方転職の決め手は「家族」と「人生設計」

 エグゼクティブが地方企業への転職を検討するきっかけには、キャリア上の判断だけでなく、人生設計そのものの見直しも含まれます。

 特に大きな契機となるのが、家族に関わる事柄です。

 エグゼクティブ層の多くは40代や50代ですが、この年代は親の介護と子育てが重なるケースも少なくありません。親の体調を気にかけて地元に戻る選択や、我が子にとってより良い教育環境を選び、家族のそばで暮らすことを優先する意思決定は、エグゼクティブにとって重要なテーマとなっています。

 また、もう一つの大きな要因として、大企業における役職定年があります。

 近年、首都圏の大企業を中心に役職定年の年齢の引き下げが進んでおり、場合によっては45歳前後でキャリアの転機を迎えるケースもあります。役職を離れた後の働き方について考えた結果、新たな活躍の場として地方に目を向けるエグゼクティブが増えています。

 実際に地方企業への転職を果たしたエグゼクティブの多くは、キャリアだけでなく今後の生き方までを見据えた意思決定として、地方へのUIターンを選択しています。

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