連載
» 2007年10月31日 12時48分 公開

特選事例:PLM実現のために編み出された秘策――情報共有テンプレート (1/2)

国内外問わず、ものづくりの現場には「暗黙知」が発生する。製造、開発、設計、企画それぞれの現場でこれを整理し共有することが大切だ。

[ITmedia]

効果測定

開発期間が1/2〜2/3に短縮


導入前の課題

海外生産拠点では開発設計と生産の間にグレーゾーンが生じやすく、その部分を現場のキーパーソンに依存せざるを得なかった。人への依存度が高いため、タイムリーかつ精度の高いBOM管理ができず、現場が混乱するケースもあった。


導入後の効果

上流のPDMで生産準備情報の調整を行い、生産システムに整流化して流し込むという連携ができたことで、開発期間の短縮や部品調達コストの削減、生産効率の向上が図れた。


 東芝は2001年度から「Time to Market No.1」を目標に掲げている。この取り組みを技術的な側面から支援するため、PLM(Products Lifecycle Management)の構築に取り組んでいる。

 PLM構築には、まずPDM(Product Data Management)を導入し、設計情報を蓄積して整える必要がある。そこで同社は東芝ソリューションをパートナーにメイトリックス ワンの「Matrix BPA」と、独自開発した「東芝テンプレート」を活用する方針を取った。

ToBeプロセスだけでなく現場のAsIsプロセスを反映

 同社がPDMツールに求めたのは、開発設計のToBeプロセス(あるべきプロセス)を表現できること。そこで「Matrix BPA」を選んだのだが、導入は一筋縄ではいかなかった。ISセンター長附の肥後野恵史氏は、当時を振り返る。

 「『Matrix BPA』はToBeプロセスの表現に優れていたものの、それゆえに現場が積み上げてきたAsIsプロセス(現状のプロセス)をうまく表現しきれず、現場が混乱する恐れがありました。先行導入するモデルカンパニー4社の各現場からは、現場のAsIsプロセスを活かしてほしいという要求が寄せられ、しかもその多くに共通項があった。共通部分は、おそらくグループの他のカンパニーに導入するときも必要になるはず。そこで共通部分をテンプレート化して、『東芝テンプレート』を開発しました」

東芝 ISセンター長附 肥後野恵史氏

 ToBeプロセスを表現する「MatrixBPA」と、現場のAsIsプロセスを活かす「東芝テンプレート」という強力な武器を得て、PLM構築は順調に進んだ。各カンパニーでは国内設計部門のデジタル化、調達部門との連携が一段落して、04年度から次のフェーズとして、製造部門やパートナーとの連携を中心に進めている。

 その一環として取り組んでいるのが、海外生産拠点との連携だ。家電製品を製造する東芝コンシューマープロダクツのタイ工場(TPT)のケースで解説しよう。

 TPTではBOMの鮮度と精度の維持が課題になっていた。日本から届いた構成表は、タイでTPT生産用BOMに修正され、現場からの変更要求があれば、再度、日本の設計部門に送られる。ところが、タイムリーに伝わらないと、納期に間に合わせるために暫定的な対応を余儀なくされ、設計と生産のあいだにグレーゾーンができる。そこをスムーズに回すノウハウは現地のキーパーソンが持っていたが、人に依存すためにミスが発生しやすく、正しい図面やBOMが把握できずに現場が混乱するケースも起きていた。そこで上流のPDMで生産準備情報の調整を行い、生産システムに整流化して流し込むという連携を開発。04年には洗濯機で運用を開始し、5年には冷蔵庫など他部門への展開も拡大した。

 設計と生産の連携や、それに伴うプロセスの見直しで、開発期間は大きく短縮された。TPTで生産している某機種の場合、3DCADの現地化や現地主導の内外製決定、設定変更処理の迅速化、金型ローカル化による輸送期間短縮などにより、企画決定から量産開始までの期間が約2カ月短縮。他のカンパニーでも同様の効果があり、開発期間は平均して1/2〜2/3に短縮されている。

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