SEが持っていたい10のパワー―― でも最後は人間力間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)

» 2008年08月22日 13時45分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]
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完全無欠なSEは存在しないが…

 昨今のように景気の先行きが怪しくなると、IT投資も削減傾向になる。もともとSE業務がオフショアや外国人に流れる傾向にあり、その上投資も抑制されると、力のない日本人SEや顧客から敬遠されるSEは淘汰される。SEが不足だと言う話は、上級SEやプロジェクトマネジャーのリーダークラスについてである。

 そもそもSEが生き残るためには、そしてIT導入に貢献するためには、どうあるべきか。筆者の持論は、SEは5つのファンダメンタル・パワーと、5つのプロフェッショナル・パワーを持てということである(筆者著「迫り来る受難時代を 勝ち抜くSEの条件」洋泉社)。

 前者は、(1)フィロソフィーを持て(2)本質を見極める力を養え(3)創造的思考力を養え(4)「人間力」がSEを本物にする(5)ビジネスマインドを鍛えよ、である。

 そして後者は、(1)基礎的実務能力(2)受注獲得能力(3)コンサルティング力(4)設計力(5)システム責任能力、である。

 しかし、それらを備えるSEは完全無欠のSEであり、滅多に存在しまい。10のパワーを持てと勧める理由は、SE各人がこれに照らし合わせて自分に何が欠けているか、欠けている中で、目下の業務を合わせ考えたときにどの部分を当面補う必要があるか、をチェックするための項目として使えという意味である。そうしているうちに、あるべきSEの姿にだんだん近づいていく。

さて、完全無欠なSEとしてIT導入に関わることがおよそ無理なら、最低限備えるべき力は何か。筆者の経験や上記の例から言えると、それは「人間力」である。

 多くのユーザーが異口同音に、「SEは、やれ技術力だ、やれ政治力だ、やれ何だかんだと言っても、結局大切なのは人間性なんだ」と口にすることが、それを証明している。

 なぜ「人間力」が重要か。人をひきつける魅力を持つSE、すなわち誠意と謙虚さを忘れず、高い意欲と熱い情熱が脈打つSEは、プロジェクトメンバーやユーザーの信頼も得られるし、考え方がしっかりしていてシステム思考も経営戦略的思考も備え、そして多くのことを学んで身に着けようと、常に努力をするからだ。では、「人間力」を身に着けるにはどうしたらよいか。これはその人の総合力であるから、理屈ではどうしようもない。ただ言えることは、「聞き上手になれ」ということである。相手の主張を、特にユーザーの言い分を、徹底して聞きに回ることである。

 先の例に挙げた、A社のD情報システム部長にしても、ベンダーB社のCリーダーにしても、「徹底して聞き役」に回ることで、ユーザーの信頼を得ることができ、やがて自分自身も角が取れて謙虚になり誠意を持つようになっていく。高い意欲・熱い情熱・高度な技術はもともと備えているのだから。

 要するに、徹底して「聞き上手」になることを、「人間力」体得の入り口にするしかない。そしてSEには、若い頃から「人間力」の重要性を説き、教育をしなければならない。教育に与かる上司が「人間力」があり、それを知っていなければならないが。

 もともと高い意欲も情熱も技術もないSE、あるいは「聞き役」に徹することができないSEは、一生失職の恐怖におののきながらSEの末席を汚していくしか道はない。

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