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» 2009年04月16日 08時15分 UPDATE

景気探検:WBC効果で日経平均が上昇、今秋までには景気の谷も

日本チームの連覇で幕を閉じたWBC。大会期間中に日経平均株価は1054円上昇し経済効果をもたらした。人生の応援歌がヒットするなど、そろそろ不景気も終わりに近づいている。

[景気探検家・宅森昭吉,ITmedia]

 国民的関心事とも言えるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での侍ジャパンの活躍が厳しい経済情勢にある日本国民を元気付け、株価や景気の下支え要因になったようだ。3月24日(日本時間)に侍ジャパンが宿敵・韓国を決勝で倒し、連覇を果たした。日本中が「世界一」の歓喜に酔った。

 今回のWBCは3月20日の第2次ラウンド1位決定戦の「日韓戦」が平均視聴率40.1%、24日の決勝の「日韓戦」は平日にもかかわらず36.4%を記録するなど、空前の盛り上がりを見せた。

 日本が優勝した2006年の前回大会、開催期間中の日経平均は832円上昇した。今回の第2回大会も、日本の初戦となる中国戦が行われた3月5日の日経平均7433円(終値)から、大会終了時の終値は8488円で1054円高となった。

応援歌ヒットで景気後退も終わり?

 ヒット曲にも先行き変化の兆しが出てきた。「嵐」の2009年第1弾シングルCD「Believe/曇りのち、快晴」が、3月2日〜8日を対象とした週間シングルランキングにおいて、初登場で50.2万枚の売り上げを記録して首位になった。これは昨年、年間シングルランキングで1位を獲得した自身の「Truth/風の向こうへ」の初動(1週目)売り上げ46.7万枚を上回り、シングルとしてはミリオンセラーになった2006年4月発売のKAT・TUN「Real Face」(初動75.4万枚)以来、3年ぶりの初動50万枚突破になった。

 メンバーの櫻井翔の主演映画「ヤッターマン」の主題歌が「Believe」、リーダーの大野智が主演を務めるドラマ「歌のおにいさん」(テレ朝系)の主題歌が「曇りのち、快晴」である。1〜3月期の連続ドラマはゴールデンタイムで1ケタ台になるものが多く全般的に不作だったが、その中で「歌のおにいさん」は午後11時15分スタートにもかかわらず、全回2ケタの視聴率を記録した。その主題歌は、人生の応援歌と言える内容である。人生の応援歌が大ヒットすると景気後退局面もそろそろ終わりというジンクスがあるので、嵐の今作品の今後の動向に注目したい。

1年で指数水準が半減近くに

 足元の景気の厳しさを確認しておこう。3月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIがマイナス58と、1975年5月調査(マイナス57)を下回る史上最低水準になった。2008年10〜12月期、1〜3月期と鉱工業生産の前期比が初の2四半期連続減少が確実である。2008年2月分の鉱工業生産指数の指数水準は110.2で史上最高水準だったが、2009年2月分速報値では68.7まで大きく低下し、わずか1年間で1983年4月分(68.7)以来の低い水準になった。また、出荷指数は前月比6.8%の減少である。こちらも5カ月連続の減少になった。

 一方、在庫は前月比4.2%減と2カ月連続の減少になった。出荷の減少以上に生産が減少している。在庫率指数は158.2と史上最高水準を更新した。在庫調整が進む一方で、出荷が急激に低下しているため在庫率の大幅上昇が続いており、これに対応した動きをしているとみられる。在庫の水準はそれほど高くなく、需要さえ出れば生産増に結び付きやすい状況であることを示唆する数字と言えよう。

 3月調査の日銀短観では、大企業・製造業の「先行き」業況判断DIはマイナス51と「最近」より7ポイントの改善見通し、大企業・非製造業では「先行き」業況判断はマイナス30と「最近」より1ポイントの改善見通しである。大企業では前回調査が悪化の見通しであったことに比べ、先が見えない状況からはいくぶん変化してきたと言えそうだ。

遅くとも秋までには景気の谷

 景気ウォッチャー調査や消費動向調査は1、2月分とも2カ月連続で改善した。ただし、景気動向指数は2月分までは先行CIも一致CIも前月差は大幅下落で、これまで発表されたデータだけからは、景気動向の厳しさが確認される。

 3月分以降は改善する可能性が出てきた。3月分の先行CIの採用系列を見ると、日経商品指数は前月差寄与度がマイナス0.11程度と引き続きマイナス寄与の系列である一方、東証株価指数、長短金利差、中小企業売り上げ見通しDIの3系列は、前月差寄与度がそれぞれ0.39、0.40、1.09程度のプラス寄与の系列になることが判明している。4系列分の寄与度の合計では、前月差はプラス1.77程度になる。このため5月に発表される3月分の先行CIの前月差は今後の採用系列の出方にもよるが、6カ月ぶりに前月差プラスに転じる可能性もあり得る状況だ。

 一致CIの採用系列には商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)が各々前年同月比で入っている。2月分はうるう年の反動で前年同月比の数字では前後の月よりその分さらに悪い可能性が大きい。また生産指数の3月分・4月分が製造工業予測指数通り前月比増加に転じるなら、生産指数ならびに採用系列の約半分の生産関連統計は2月分が谷になる可能性がある。このため一致CIの採用系列の過半数が2月分にいったん谷をつけ、半年以上にわたり緩やかにでも改善したケースでは、景気の谷が今年の2月となる可能性さえ出てくる。

 先行CIの動向などからみると、景気の谷はもう少し先になる可能性の方が大きいだろうが、次の景気の谷が意識されるようになってきた。世界的な金融危機の影響でL字型に近い回復の可能性が大きいとはいえ、早ければ既に2月に、遅くても今秋ごろまでには、景気は谷をつけることになりそうだ。


プロフィール

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宅森昭吉(たくもり あきよし)

「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。



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