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» 2009年07月21日 07時45分 UPDATE

小松裕の「スポーツドクター奮闘記」:ベオグラードでにぎるおにぎり (1/2)

先日閉幕したユニバーシアード競技大会で、日本の体操男子団体は大会3連覇を達成しました。その陰には今大会から初めてコーチとして帯同する鹿島丈博コーチの手厚いサポートがありました。

[小松裕(国立スポーツ科学センター),ITmedia]

 今回はセルビア・ベオグラードで開催中のユニバーシアード競技大会の選手村から書いています。ユニバーシアードは、国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する全世界の学生の総合競技大会のことで、別名「学生のオリンピック」とも言われています。夏季、冬季大会とも2年ごとに開催され、日本では1967年に東京、1985年に神戸、1991年に札幌、1995年に福岡で開催されました。

 今回の日本選手団は、陸上、水泳、サッカー、テニス、バレーボール、体操、バスケットボール、卓球、フェンシング、柔道、アーチェリー、テコンドーの12競技、総勢392人でベオグラードに乗り込みました。わたしは、日本選手団本部のメディカルスタッフの責任者として帯同しています。本部メディカルスタッフはトレーナー1人、ドクター3人の計4人ですが、個別にトレーナーやドクターを帯同させている競技団体もあります。

 選手村の日本選手団宿舎に本部メディカルルームを設置し、日本から医薬品や医療機器を持ち込んで大概のことには対応できるようにしますが、レントゲンや血液検査などの精密検査が必要になった場合には選手村のクリニックで対処します。積極的に競技現場にも出向いて、試合前の対応を手伝ったり、試合後のドーピング検査に付き添ったりします。何より、大きな声で応援するのも仕事です。日本からこれだけ離れた地には、日本の応援団はほとんどいませんから、ドクターといえども貴重な応援団の一人です。

 日本選手団の中にはオリンピック選手もいますが、多くがこれからオリンピック選手を目指す若者たちです。オリンピックと同じように選手村での生活という、普段とはまったく違う環境の中でも力を発揮できる「たくましさ」を身に付けなければいけません。今回の選手村の食堂の食事も、毎日同じような、あまりおいしいとは言えないメニューが続いています。最高のコンディションで試合に臨むために、どんな食事でも腹一杯食べられる力、そして食べられなくなったときの準備も必要になります。そんなことを皆勉強しながら、世界で勝てる選手に育ってゆくのです。

板長として活躍する鹿島コーチ

 今大会は、さっそく男子体操チームが団体総合で3連覇を達成し、翌日の個人総合でも星陽輔選手が金メダルに輝きました。日本選手が活躍する中、体操会場には選手に付き添い演技を補助しアドバイスする鹿島丈博コーチの姿がありました。鹿島コーチはわたしがソフトボールのチームドクターとして帯同したアテネオリンピックで、たまたま体操チームと同部屋になって以来の付き合いです。鹿島コーチはアテネ、北京と2回のオリンピックに出場し、団体総合で金メダルと銀メダル、種目別の銅メダルと3つのオリンピックメダルを持っています。あん馬の名手で、2003年にアナハイムで行われた世界選手権では世界チャンピオンにもなっています。

 しかし、けがにも苦しみました。アテネオリンピック後の2006年には左肩を手術、リハビリ後に復帰した2007年にも左手甲を骨折し手術、それを見事克服して北京オリンピックに出場し銀メダルを獲得しました。「けがの経験があったからこそ、いろんなことが見えてきて、強くなることができました」。笑顔で語る鹿島コーチですが、一流のアスリートの言葉には重みがあります。

 昨年に引退し、指導者としてのスタートを切った鹿島コーチにとって、今回のユニバーシアードはその初陣ということになります。日本選手団宿舎の体操チームの部屋では「板長」と皆に呼ばれ活躍していました。前述した通り、食事面では何が起きても大丈夫なように日本からさまざまな食材、調味料、炊飯器などを持ち込み、時には地元のスーパーに買い出しに行き選手のために食事の支度をするのです。その点も体操日本の強さの秘密です。

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