高校野球監督の指導法から学ぶ問われるコーチング力(1/2 ページ)

いよいよ高校球児たちによる夏の甲子園が始まった。今回のコラムでは、選抜優勝などここ数年で一躍強豪校の仲間入りを果たした長崎・清峰高校の監督からリーダーのあるべき姿を模索する。

» 2009年08月13日 08時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]

 8月8日から甲子園を舞台に、第91回全国高校野球大会が始まった。今回は惜しくも出場を逃したが、2009年春の選抜で長崎県立清峰高等学校を優勝に導いた吉田洸二野球部監督が、『日経ビジネスマネジメント2009年夏号(Vol.6)』に紹介されていた。

 リーダーの役割とは、プレイするところにはなく、部下を支援するところにある。部下が気持ち良く、自発的に働き、成果を上げられる環境を整えなければ、組織として結果を出すことはできない。高校野球の現場も同じである。「部員は監督の鏡」という考え方に基づく吉田監督の指導法には、ビジネスの現場で役立つエッセンスがたくさんつまっていたので紹介したいと思う。

選手ではなく自分に責任がある

 会社を経営している知人に「部員が言う通りに動いてくれない」とこぼした吉田監督は、その知人から企業も同じだと言われたことによって、会社の経営と高校の部活の指導には意外な共通点があることに気付いたという。そこで、ビジネスマン向けのセミナーに行ったり、企業経営について書かれた本を読んだりして勉強を重ねたそうだ。

 「部下が動いてくれないのは、上司である自分に原因がある。部下にどうこう言う前にまずは自分を見つめ直すべきだ」と書かれた本を読み、それが自分の行動を振り返るきっかけになったという。それから、生徒が集中して練習に取り組まない原因が、生徒ではなく、自分が立てた練習のメニューにあることに気付いたそうだ。その結果、「なぜ選手は頑張れないのだろう」ではなく、「なぜ選手を頑張らせることができないのだろう」と考えるようになった。

 監督がいくら頑張っても、選手が動かなければ試合には勝てない。企業でもいくらリーダー自身が頑張っても、部下が動かなければ成果を出すことはできないのである。リーダーは「どうして部下は動かないだろう」ではなく、「どうして部下を動かすことができないのだろう」という視点を持ち、常に自分を振り返ることが大切なのだ。振り返ってみると、リーダー自身に原因がある、ということは意外に多い。部下のやる気を引き出し、やりがいを感じながら仕事に取り組めるよう、モチベーションを高め、成果を上げられるように支援をしていく人こそがリーダーなのである。

相手への期待を明確にせよ

 リーダーに必要なものは次の2点である。

(1)果たして欲しい役割を明確に示す

(2)任せてかかわる

 リーダーは部下に、果たしてもらいたい役割を明確に示すことが大切である。吉田監督はチームでどんな人材を求めているかを明確にし選手に示したという。野球には、それぞれのポジションに求められる役割がある。このポジションの選手にはこのようなことをやって欲しいという目標を設定し、練習に取り組ませたのだ。

 ビジネスの現場でも、組織の中でそれぞれの人に担ってもらいたい役割があるはずである。それを部下に対して明確に示しているリーダーがどれくらいいるだろうか。果たすべき役割や目標があるから、人は頑張りやる気を起こすのである。リーダーは、果たして欲しい役割を部下に提示して、ことあるごとに言い続ける必要がある。

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