ドラッカーの真意と夢にまでうなされたプロフィットセンターの実態生き残れない経営(1/3 ページ)

ドラッカーは難解だ。例えば、ドラッカー理論の最も基本的な部分「企業の目的は顧客創造である」に関わるテーマであるが、筆者が若い頃から嫌というほど経験し、泣かされてきた。

» 2010年09月30日 08時59分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

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 今、P. F. ドラッカーが静かなブームだ。ドラッカーの著書が、書店やインターネット販売で結構売れているし、念のため調べてみると身近な図書館では大体「貸出し中」だ。それは、「もしドラ」(岩崎夏海著「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」ダイヤモンド社)の影響かもしれない。いずれにせよ、ドラッカーが広く読まれていることは、悪いことではない。

 ドラッカーがその著『マネジメント』の中で、マネジメントする人の課題と仕事を解説しているが、マネジメントする人はトップマネージャーとは限らず、小さな事業単位に責任を持つ職長も含むとしている。従って、トップや経営者に限らず世の管理者たちが、ドラッカーに接し、ドラッカーを理解しようとすることは、大変良いことである。

 しかし、ドラッカーは難解だ。その理論を真に理解して実行に移そうとなると、そうそう容易ではない。例えば、ドラッカー理論の最も基本的な部分「企業の目的は顧客創造である」に関わるテーマであるが、筆者が若い頃から嫌というほど経験し、年から年中泣かされ、夢にまでうなされてきた「企業収益」に絡んで、ドラッカーを学ぶほどにあるときは納得し、ある時は大きな疑問を持つ「プロフィットセンター」についてである。

 「プロフィットセンター」なる言葉は、ドラッカーが使い始めたそうである。

 「はるか昔に、わたしはプロフィットセンターなる言葉をつくった。いまではそのことを恥ずかしく思う。なぜならば、社内にあるものは、プロフィットセンターではなくコストセンターにすぎないからである。プロフィットは外からしかやってこない。顧客が注文をくれ、支払いの小切手が不渡りにならなかったとき、ようやくプロフィットセンターをもてたといえる。それまでは、コストセンターを手にしているにすぎない。」(P. F. ドラッカー著、上田惇生訳「ネクスト・ソサエティ」ダイヤモンド社 2002年5月)

 このセリフ、もっともらしく聞こえるが、本当にそうだろうか、外にあるのは「プロフィットの源」であって、「センター」は社内になければプロフィットをコントロールができないのではないか。それは、筆者の切実な経験から言えることである。ドラッカーを字面だけから解釈せず、意訳しなければならない。

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