グローバル企業で働く人材に求められるスペック点検 あなたは日本を出ても活躍できるか(2/4 ページ)

» 2011年01月06日 08時00分 公開
[山本利彦,ITmedia]

 この発表に関して、さすが先進的な企業の戦略的な決定であると好意的にみる意見と急にそんなことを決定しても現場社員がついていかないだろうと批判的な意見もあり、賛否両論でした。この決定が吉と出るか、凶と出るのかは、数年後にならないと分からないかもしれません。

 日本企業にあっては先進的な両社の取り組みですが、たとえ欧州系の企業であってもMultinational Companyと呼ばれる大手のグローバル企業では既にかなり前から社内公用語は英語であることは普通のことなのです。わたしのかつての日本人上司は米国の大手グローバル企業で20年以上勤務した経験の持ち主で、彼は若いころ(つまり20年も前の話です)米国本社の実施する英語研修に半年間も参加したといっておりました。

 米国企業はグローバル化の進展が早かっただけに、人材教育も日本の大手企業より一歩も二歩も進んでいたことの証左といえます。余談ですが、米企業はグローバルな時代であっても自国の社員に英語教育を施す必要がありません。それは競争上大変有利なことと感じるのは日本人のやっかみでしょうか。

 一方、日本経済が失われた20年と言われるほど長期低迷期に入り、日本が普通の老大国になる中、株主からリターンを求められる日本の各企業はBRICs、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)などの海外市場でのビジネス展開にリソースを配分することが有力な戦略オプションであることは、今さら論を待たないでしょう。

 このような状況下、日本の各企業は自動車、バイク、エレクトロニクスなどの大手メーカーが日本経済の勃興とともに大きく成長するのに伴い、貪欲にさらなる成長の機会を米国など海外市場に求めた第一のグローバルステージを経験しました。

 そして今、日本経済はかつての勢いを取り戻すことが現実的には大変難しい長期低迷時代を迎えています。背水の陣ともいえる第二のグローバルステージを迎えていると思われます。

 第1回目の今回は、グローバル化を語る上でどうしても避けて通れない「言葉」つまり「英語」についてもう少し議論してみましょう。

 わたしは日本人の英語力はどの程度なのか何冊か書籍を読み調べてみました。英語を母国語としない学生が、米国の大学あるいはMBAなど大学院の入学試験をうける際に必ずといっていいほど求められるTOEFLの成績(2005年-2006年)では日本人の成績は、なんとアジアで最下位の24位であることが判明しました。北朝鮮と最下位を争う状況なのです。上位国とはスコア中央値でもかなりの開きがあります。僅差でもなんでもありません。

 ちなみアジアトップはシンガポール、2位はパキスタン、3位はフィリピンです。我が国の直接的なライバルともいえる韓国は9位、中国は13位です。これはさすがにまずいですね。

 この事実をまずわたしを含めたビジネスパーソンは真摯(しんし)に受け止めるしかありません。われわれ日本人は英語の実力がないのです。この体たらくは日本の文部科学省の過去の英語教育が間違っていたからなので、文科省は批判されてしかるべきとは思うのですが、そのことに文句を言っても仕方がありません。今からでも英語を学習するしかないと観念しましょう。

 わたしは書籍の出版を計画しており、出版社の編集者と打ち合わせをしました。英語勉強法に関する本はいつの時代でも必ず売れるジャンルであると聞きました。一日平均200冊もの新刊本が発売される状況であってもです。このことからも、日本人の英語学習への意欲が強いことが分かります。

 しかるに、上記のTOEFLの点数が示すような日本人の英語力不足の原因を探ると、勉強法が間違っている、という仮説にどうしてもたどりついてしまいます。わたしは、多くのビジネスパーソンが英語を勉強する際に英会話学校に通うなどして「英会話を学ぶ」ことにフォーカスすることが英語力が上達しない1つの原因だと考えています。

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