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» 2011年09月12日 08時00分 UPDATE

『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦:テレビ局の品格とスポンサー企業の品格 (1/2)

民放テレビ番組の低俗化を何とかできる方法が1つだけある。

[古川裕倫,ITmedia]

民放の低俗番組はなんとかしなければいけない

 本連載やITメディアの読者は、今のテレビ番組の低俗化をどう考えているであろうか。ぜひ意見を聞かせてもらいたい。深夜の低俗番組、ワイドショー、お笑い、バラエティーなどに疑問を持っている人も多いと察している。多くの経営者に聞いてみると、そもそもテレビはほとんど見ないだとか、過去のアーカイブや報道番組しか興味がないというような答えが多い。若手にはさまざまな意見があるようだが、多少の見識がある人は、深夜帯の低俗番組にはさすがに疑問を持っているようだ。

 海外経験のある人は、ほとんどがひどいと言う。アメリカでも西欧でも露骨なポルノ映画はあるものの年齢制限がしっかりあり、能動的に劇場に来る人に見せる映画と、受動的に子供も見ることができるテレビ番組が、ちゃんと区別されている。女性の下着姿やオッパイがテレビに映る国は日本ぐらいではないかと思う。その証拠に、外国から日本に出張にくる大勢のビジネスマンからは、びっくりしたとのコメントを一様に聞く。

 先日ある著名なコメンテーターが、「日本の視聴者でテレビを(娯楽ではなく)教養の場と考えている人がいる」と驚いた表情で話をしていた。彼の解釈によるとテレビイコール娯楽である。わたしは、(気持ちは嫌だが)百歩譲って娯楽でいいと思う。教養の高い娯楽もあれば、心を和ませてくれるドラマもあり、腹の皮がねじれるぐらいおもしろいお笑い番組が編成されているのであれば構わない。同じお笑いでも人品骨柄を疑いたくなるようなつまらぬギャグから人生を考えさせられる落語までいろいろだ。

 わたしが問題としたいのは、将来を担う子供たちのためにもわが国のためにも低俗番組を排除することが必要であり、それ以外の番組も少しはましなものを放送すべきと考えている。品格のあるテレビ局であってほしい。後に述べるが、スポンサー企業も品格が要る。

民放の言い分

 総務省の免許事業であるテレビ放送関係者からこのような説明が聞こえてくる。昨今はスポンサーからの広告収入が減少し、番組予算をカットせざるを得ない。これについては、理解できる。低予算で番組制作をするのも仕方ない。それでも高視聴率主義は変わらない。高視聴率獲得は局の使命であり、スポンサーにとって媒体価値を上げるのだから、と。

 もう1つ。日曜日の早朝などで、民放への視聴者意見を採り上げている番組がある。たまにしか見ないので内容をしっかり伝えられないのはわたしの怠慢であるが、とにかく民放対視聴者という立場からの番組である。視聴者のお叱りなどと局側の説明が中心である。ここにはスポンサーの意見などは反映されていないようだ。

 さらに報道の自由という別の議論がある。報道の自由は妨げる意志はまったくない。自由に報道してもうことはたいへん結構なことである。ただし、誤報ややらせは報道の自由ではない。低俗番組もこの議論からは自由という範疇に入ると思うが、報道の自由というより、民放の勝手と思えてならない。自由が人に悪影響を与えてはいけない。罪にならなくても道徳違反である。

 国家が放送局に対して免許を出している以上、本来は政治的合意が得られれば、例えば低俗番組を規制してもよいはずだが、報道の自由という伝家の宝刀で戦ってくることは目に見える。ちなみに今の凋落した政治家にそれを求めても、やりきる人はいないだろうし、むしろ政治家には本来取り組むべき急場の仕事をやって欲しい。

 

コマーシャルの仕組み

 コマーシャル(以下CM)を簡単に説明すると、タイムCMとスポットCMに分かれる。タイムCMとは番組提供者が番組の枠の中でCMを流すことであり、スポットCMとは番組枠以外に局が持つ空き時間に流すCM。どれだけたくさんの人に届き(Reach)、何回見せることができるか(frequency)が、CMの商業的価値である。その積算がGRP(Gross Rating Point)と呼ばれ、広告料金の基本となる。

 ここで、企業はテレビ媒体を使って本来何をしたいのかを考えてみたい。一義的には、製品やサービスを告知し、消費者に販売したいという分かりやすい目的である。費用対効果を考えるので、企業の広報担当者はGRPの高いCMを打ちたい。つまり、より多くの視聴者が見ている番組(高視聴率の番組)や多くの人が見ている時間帯である。

 次に、企業イメージを伝えたいという希望がある。しっかりした会社は、質の高い番組のタイムCMをしている。今では1社提供は少なくなったが、例えば、昔の東芝日曜劇場(東芝)や花王名人劇場(花王)などである。視聴率はもちろん気にかかるであろうが、会社のイメージをいかに伝えるかがポイントである。よって、番組の内容もスポンサーが評価することとなる。個人的には「この木なんの木、気になる木……」の日立のCMなどはイメージがいい。ただ、1社提供はコストが高いので、今はミニ番組ぐらいしか見掛けない。番組提供では、人気が高くタイム枠が既存のスポンサーで一杯であれば、新規スポンサーが希望してもタイムCMのスポンサーにはなれない。

 CM1本当たりの露出度を考えるのであれば、スポット広告の方が安いのが一般的である。具体的に言うと、一定の予算に対して、一週間に何本どの時間帯にスポットCMを流すと局との取り決めを行う。具体的には、週間番組表にマジックで斜め線を入れた提案書を局(広告代理店経由)が作成し、スポンサーに提示する。斜め線は、早い時間帯もあれば深夜帯にも普通入れられる。1日当たり、もしくは1週間当たり何本スポットCMを出して、いくらという取り決めとなる。

 視聴者側からすると、実際のコマーシャルが流れているのを見て、タイムCMであるのかスポットCMであるのかは分かりにくい。夜中に一流企業のスポットCMが低俗番組の前後に流れていることがよくある。つまり、低俗番組を提供しているのかその前後のスポット枠に広告を出しているか視聴者にはほとんど分からない。

 もし、スポンサーが付かないとテレビ局はどうするのか。自社番組宣伝のための自社CM(番宣と呼ばれている)を流すか、公共のCMを流すぐらいしか枠を消化できない。震災後、しばらくAC(公共広告機構)のCMがおびただしい量で流れていたのは記憶に新しい。スポンサーがCMを自粛したので、これで枠を埋めるしかなかった。

 つまり、スポンサーあっての民放であり、スポンサーが民放に大きく影響を与えることができるのである(報道の自由と問題をすり替えてはいけない)。

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