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» 2012年01月25日 08時03分 UPDATE

ビジネスイノベーターの群像:既存市場でシェア争いはしない――個性あふれる商品でコンビニやスーパーの棚を占める安曇野食品工房の三原社長 (1/2)

2009年丸大食品グループとサッポロホールディングスの合弁会社として設立し、チルド商品という新たな市場に挑戦し続けている。今話題の「飲むデザート」の先駆けとなる新製品を次々と投入し、独自のポジションを築いている。

[聞き手:浅井英二、文:大井明子,ITmedia]

 「安曇野食品工房」と聞いても、すぐにピンと来る人はまだ少ないかもしれない。しかし、多くのコンビニエンスストアやスーパーの棚には、「EMIAL」ブランドや各企業のPB商品としての同社商品が並んでいる。

 安曇野食品工房は長野県松本市でもともと1998年に大手食品メーカー、丸大食品の生産事業会社として創業、2009年4月にサッポロホールディングスと合弁、ヨーグルト、デザート、チルド飲料事業を開始して再スタートを切った。

 この時社長に就いたのが、「入社以来30年近くビール販売営業の第一線にいた」というサッポロビール出身の三原氏だ。「同じ食品業界といっても、販売が免許制であるビールとは全く違う業界で、正直戸惑いがあった。また、経営トップとして合弁会社を率いることになるので、大きな責任を感じて眠れない日もあった」と振り返る。しかしその一方で、新しい世界に飛び込むことへの「期待や楽しみな気持ちもあった」という。

大手同士の合弁だが「ベンチャー企業のよう」

azumino2-1.jpg 安曇野食品工房の三原社長

 大手同士の合弁ではあるが、「ベンチャー企業のような会社」と三原氏は言う。双方の親会社の本業とは異なる事業であり、狙う市場も違う。組織の規模も小さいので、比較的自由度が高く小回りも利く。

 「本体の中で取り組もうとすると、既存のやり方に影響されてなかなか思い切ったことはできなかったかもしれない。双方の親会社の良い面を取り入れながら新しいことにチャレンジし、いい方向に伸びているように思う」(三原氏)

 東京のオフィスは総務、営業、生産管理やマーケティングなどの部署がワンフロアに集まっており、社長の席からはすべて見渡せる。

「コミュニケーションは非常に密だし、情報共有もスムーズ。何かトラブルがあると、電話対応や人の動きなどの様子ですぐに分かるほど」(三原氏)

まずは社員の不安取り除き「ベクトルを合わせる」

 丸大食品グループにとってもサッポログループにとっても、合弁事業の開始にあたり、両グループの経営資源を効率的に活用できる体制を構築し、企業価値の向上を図るという目的があった。

 「新体制への期待感を持つ人もいたが、不安を持つ人もいた」と三原氏は言う。トップとしてまずやるべきは、社員の不安を取り除き、これから進む方向性のベクトルを合わせることだと考えた。

 まずは、合弁会社としての事業開始に合わせて「3年後に売上高を倍増し100億円を目指す」としたプレスリリースを発表した。これで、経営層としての安曇野食品工房へのコミットメントを表した。

 そして社員約30人で、この目標達成のために何をすべきかを考える合宿を行った。経営側が与えたテーマは「デザート、ヨーグルト、飲料と、合計3つある工場の稼働率の最適化」というものだった。3〜4班のワーキンググループに分かれて、現状の問題点の洗い出しや戦略について話し合った。コンビニエンスストアだけでなく、スーパーマーケットへの販路拡大などの方針がまとまったものの「実はこのときには、どんな製品ラインアップでどうやって売上を増やすかという、具体的な構想ではなく、自分たちが考える会社のあるべき姿について、社員全員で語り合った」と三原氏は振り返る。

 三原氏はまた、社員一人ひとりと30分ずつの面談も実施した。この会社についてどう考えるか、今後会社をどうしていきたいか、合弁会社として再スタートを切ったことについてどう思うかなどを聞き、自分の思いも社員に丁寧に伝えた。

 「3年後に売上100億円を目指すというのは、到達点ではなく通過点。近い将来は400〜500億円を達成し、両方の親会社にとってナンバーワンの子会社になろう。そうなれば、ほかの大手乳業と本気で競争していこう、と伝えた。そうすることで、“この社長は本気なんだな”と感じてもらい、当初新体制の会社に対して持っていたであろう不安を解消したかった」(三原氏)

 ビールの営業で駆使した「飲みュニケーション」も活用した。初年度は特に、できるだけ社員と食事をする機会を作り、コミュニケーションに努めたという。

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