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» 2014年01月28日 08時00分 UPDATE

気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀:クリエーター生態系サイクルを仕組みにする(中編) (1/2)

自分に作れない面白いものを見たときクリエーター魂に火が付く。オリジナリティがあり、新たなものを作り出せる人が多ければ「クリエーター生態系」は加速する。それをいかに仕組みにするか。

[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:小川晶子,ITmedia]

 面白法人カヤックは、鎌倉に本社を構える会社だ。2012年にできた横浜展望台オフィスには開放感が漂い、社員の雰囲気や個人の持っている名刺からは「面白いこと」を重要視した、自由な社風がうかがえる。

 「サイコロ給」――給料日前にサイコロを振って、出目で給料を決める制度は、知っている人も多いのではないだろうか。一風変わった社内制度が着目されることの多いカヤック。しかし、ユニークな社内制度が次々と生まれる仕組みや、同社のマネジメント手法については、いまだ多くは語られていない。

 代表取締役が3人、200人前後いる社員のうち8割がWebクリエーターという一風変わった組織構成で、どのように組織の成長性を維持しているのだろうか。その秘密を、柳澤大輔代表と執行役員で組織マネジメント業務を担当している(当時)佐藤純一氏に聞いた。

クリエーターのアイデアに人が集まり、ものを作り、解散していく。クリエーター生態系のサイクルを回していくための仕組み作り

中土井:前回は、会社そのものをコンテンツ化していくという価値観に基づいて、会社を作ってから現在までにどのような事業をしてきたのか、クリエーターが生き生きと働けるためにどのような環境作りをしているのかを聞きました。自由でカオスな環境を作るために、ルールは極力シンプルにするという仕組み作りの話がとても興味深かったです。

 人数が増えるにつれて、自由でカオスな環境を維持していくのが難しくなると思いますが、その環境維持を支える共通の価値観について聞かせてください。

佐藤:僕たちのビジョンには、「クリエーター生態系」という考え方があります。クリエーター自身からこういうもの作りたいというアイデアが出て、いつの間にかチームができて、開発して、リリースして、チームが解散する。新しいアイデアが生まれたら、またチームができて……というサイクルで成り立っているのが「クリエーター生態系」です。

 「クリエーター生態系」を根付かせて、ブランディングも収益もついてくる会社にしたいんです。それを実現するために、マネジメントはどうあるべきかを意識しています。

中土井:すごく面白い考え方ですね!クリエーター生態系を加速させる要素は何だと考えていますか? クリエーター生態系を根付かせるために、経営者としてどのような考えを持ち、どのように振舞っているのかがすごく気になります。

yanasawa290.jpg 柳澤大輔代表

柳澤:単純ですが、生態系のなかにどれだけすごいクリエーターがいるか。がすべてではないでしょうか。自分の作れない面白いものを見たときに、「俺も作りたい」って悔しくなるわけですから、オリジナリティがあって、他の人が作らないものを作り出せる人がたくさんいれば、「クリエーター生態系」は活発になっていくと思います。加速させるのはやはり人です。

 「クリエーター生態系」が正しく機能していれば、仕組みがなくてもうまく回っていくとは思っています。ただ、組織が大きくなってきたら、円滑にプロジェクトを進められる仕組みを考える必要が出てきます。僕らはそれを考えて事項しています。

中土井:円滑にプロジェクトを進めていくための仕組みは、例えばどんなものがありますか?

柳澤:現在は、プロジェクトごとに細かく工数や必要なスキルなどを分解して、社員に公開し、手を挙げた人がチームに加わっていくという方法を取っています。社員にはいろいろな人とチームを組みながら、年間何本もプロジェクトに参加してもらいます。プロジェクトごとにフィードバックを受けるという仕組みも作っています。この仕組みには外部のクリエーターも加わるので、外と内の境界もあいまいになります。独立してうちに常駐するクリエーターもすでにたくさんいます。

中土井:佐藤さんはクリエーター生態系を加速させるものは何だと考えていますか。

佐藤:「クリエーター生態系」は自律的な集合体です。やってみて上手くいかなかったら、素早く別の方策を取るというような、俊敏性重視の仕組みを作っています。僕たちの価値観には、トライアンドエラー志向があって、それを「失敗するなら最速で」と表現しています。失敗しても引きずらないで、すぐに次にいくという価値観です。

 あとは集中させるのも重要だと思います。クリエーティブとして評価されるもので、収益も上げ、コストもセーブし、ファンも多いものという風に多くを求めすぎると、やはり集中できません。作るフィールドの人は作ることに集中してもらう方がうまくいきます。役割を分担してチームを成り立たせるようにしています。小さく役割を分担して、自分はこれに集中するというものを決めてもらいます。決めたら、その役割を果たすことに集中します。

 役割を細かく分けると、それぞれの役割の間で衝突することもあると思います。例えば、コストをセーブする人と利益を上げる人がいるとします。利益を上げたいと思えば、人もたくさん投入したいし、いろいろなことをやりたくなる。でも、コストをセーブする役割の人はそれとは逆の方へ引っ張りますよね。オフェンスとディフェンスみたいな関係が成り立ちます。このように、チームの中に必要最低限の役割がそろっていれば、あとは自由にしてくださいと任せることができます。

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