京都花街お茶屋に学ぶ「切り捨て」の決断ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

大事なのは本業と方向性を決めたら、徹底的に突き詰め提供すること。

» 2017年06月08日 07時08分 公開
[高橋秀彰ITmedia]
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『「一見さんお断り」の勝ち残り経営〜京都花街お茶屋を350年繁栄させてきた手法に学ぶ〜』

 リーダーは「リードする人」です。「担当者として最も仕事ができる人」とは違います。

 リーダーの日々の仕事は作業ではなく、判断と決断です。その基準となる方針、方向性を決め、それに沿ったさまざまな意思決定をするのが仕事となります。目の前の担当業務を直接進めることではありません。

 世のリーダーには、本業を明確にし、方針や方向性を決めたならば、あとはそれを徹底的に突き詰めて磨き抜き、世に問うてもらいたいです。

 経営者の場合、その判断や決断が誤っていた場合、中途半端な磨き方であって世に支持されなかった場合には倒産しかねません。巨額な負債を抱えてしまい、個人保証による破産をするかもしれません。倒産した会社の元社長では再就職も困難でしょう。

 文字通り体を張って倒産、破産というリスクを背負って決断をし、突き詰めて考え、実行しなければなりません。

 リーダーの対義語をフォロワーとすると、両者の最も分かりやすい違いは、給料やボーナスを「もらうモノ」と考えるか「払うモノ」と考えるかです。

 この「リーダーの仕事術」という記事の読者ならば、どのようなポジションであれ、いかにしたらより多くの顧客満足が提供でき、より多くの給料やボーナスをフォロワーに払い続けられるのかを考えることも判断や決断の一助となるでしょう。

「350年間の存続」から学べることとは

 四半世紀にわたって公認会計士という仕事をしてきた経験に基づき、経営という観点から京都花街のお茶屋(以下、お茶屋)を題材として出版しました。お茶屋というと、一見(いちげん)さんお断りで、豪華な衣装の芸舞妓(まいこ)によるおもてなしという特殊な世界であって、通常の事業会社とは無関係に感じるかもしれませんが、実は現代の一般企業にとっても経営のヒントになる事象の宝庫です。

 お茶屋は、顧客も舞妓も経営者も当然に現代人であり、事業も一般的な企業と変わりありません。そんな中で「一見さんお断り」という営業形態を今に至るまで350年間も存続させ、価格競争を突き抜けて、宴会での芸舞妓さんが簡単には確保できないほど人気の日本文化の代表的存在にまでなっているという「結果」を出しています。

 残念なリーダーの典型パターンとして「それはウチの業界、業種ではできない」「地域性が違う」など、参考にならない理由を必死に探すという特徴があります。ここでは、どこをどうすれば参考になるのか、自社や自分の立場に生かせるのかを見つけることをお勧めします。

一見さんお断りは「顧客満足」を突き詰めた結果

 まず自社(リーダーであれば自分のポジション)の本業は何か、という点が明確になっているでしょうか。例えばお茶屋の場合、本業は「顧客の宴会を成功させる、つまり宴会の目的を達成させること」です。

 そのために、宴会の目的、顧客の嗜好(しこう)、出席者の人数や年齢・性別、上座・下座の人数、季節その他もろもろの要素を把握して宴会をプロデュースします。これが通りすがりの一見顧客では、情報収集も万全の準備もできません。顧客がどの程度、宴会のルールを知っているのかも分かりません。となると、宴会の成功という顧客満足が提供できなくなってしまいます。

 つまり、宴会の成功を本業と定め、徹底的に顧客満足を追求した結果、一席ごとの単品生産とならざるを得ず、それが一見さんお断りとなる要因の一つとなってしまったのです。

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