BSAは、ITの国際競争力に関するリポート「競争のための手段――IT産業競争力のベンチマーク」を日本向けに発表した。
ビジネスソフトウェア権利保護の非営利団体であるビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)は10月1日、都内で会見を行いITの国際競争力をテーマとしたリポート「競争のための手段――IT産業競争力のベンチマーク」を日本向けに発表した。同リポートで、日本は総合ランキングで米国に次ぐ2位となった。
同調査は、英経済誌「The Economist」の調査機関である「Economist Intelligence Unit」(EIU)に委託して64カ国を対象に実施した。リサーチは2006年11月から2007年4月にかけて行われ、EIU独自調査のほか、世界銀行、世界知的所有権機関、ユネスコなどから提供されたデータを基に分析された。特徴はITに特化したリサーチである点、ITの生産を対象としている点である。従来の国際的なリサーチは、電気通信を含めたIT分野の研究であったり、企業やユーザーなどのIT利用を対象にしたものであるという。
リポートは、「総合的なビジネス環境」「ITインフラ」「人的資本」「法的環境」「研究開発環境」「IT産業発展の支援」の6カテゴリーと、さらに25指標に分類して調査、採点された。スコアは、IT産業の生産性を向上させる環境が整っているかどうかを示すという。「IT産業における自国の強み、弱みを把握できるほか、他国スコアと比較することで今後のロードマップを描くことができる」と、BSA副会長兼アジア太平洋地域責任者であるジェフリー・ハーディー氏は説明した。
今回日本が総合ランキング2位(総合スコア:72.2)になった要因は、研究開発環境カテゴリーで2位の韓国(56.6)を大きく引き離す84.3という高スコアを上げたことである。とりわけ年間特許登録数の多さと、GDP3.5%に相当する民間からの研究開発資金投資が目立った。日本では産学連携による研究開発が多く見られ、他国からIT戦略のモデルケースとして評価されるという。
一方で、総合的なビジネス環境(24位)、ITインフラ(17位)、人的資本(9位)、法的環境(18位)、IT産業発展の支援(18位)と、他カテゴリーについては改善の余地があるという。特に著作権保護などの法的整備や、政府による公的支援がIT産業競争力向上のために必要だという。
BSAのアジア太平洋地域ソフトウェア政策責任者であるショウ・ヒョン・ゴー氏によると「今後は毎年リポートを報告していくことになる。従って、調査対象64カ国のIT産業競争力データを時系列に沿って分析比較できるだろう」という。
今回のリポートでは、幾つか問題点も浮き彫りになった。分析データは、平等性を保つため64カ国すべてを網羅するデータに限定される。従って、必ずしもITに特化したデータだけではないため、整合性に欠ける部分も見られた。例えば、先述した特許数データは、他産業での登録数も含んでいるという。ITインフラについても、人数当たりのPC所有数のみで普及度を判断しており、モバイルなどのインターネット端末は除外されていた。今後はこうした点を改善し、より信頼度の高いリポートに期待したい。
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