さて、先行導入をしたERP始めツールに盛り込まれているプロセスを目の前にすれば、業務改革を進めやすい。具体的イメージが湧いてきて確実に思考することができ、ツールの機能を参考にプロセスを決めていくことができる。モデルがないよりは容易で、早くなる。加えて、従業員の意識改革が不可欠だが、システムを使わせて頭を切り替えていく方が、机上の理屈で意識を変えるよりは取り組みやすい。
そもそも業務改革は、一時的作業ではない。システムを導入し、業務改革をした後も、その成果を常にモニタリングして確認しなければ成果は期待できない。PDCAサイクルを回して、所期の成果が現れていないところを修正し続けていかなければならない。プロジェクトを組んで、実行プロセスごとに責任者や期限を明確にして取り組むものなのだ。
従来のやり方が変わる、既得権を失う、負担が増えるなどの理由で、当然抵抗勢力が出る。抵抗勢力には、毅然とした姿勢で対峙しなければならない。決して妥協すべきでない。
一方で極めて重要なこととして、システム導入を先行させ業務改革を後付けで行う場合、充分注意しなければならないことがある。ベストプラクティスを参考に開発されたツールのテンプレートが優先して本来の業務改革の狙いを見失う危険性があることと、自社の強みである業務あるいは競争力を要する業務が埋没してしまう危険性があるということだ。
従って、まず業務改革のビジョンの明確化が大前提となる。業務改革のビジョンは、企業のあるべき姿から描かれる。目標とするビジネスモデル、企業の強みなどを明確にし、競争力のない分野を整理して、企業のあるべき姿を描く。そして、そこからあるべき業務プロセスの概略を決めことによって、業務改革本来の狙いを生かすことができる。
さらに、自社の弱い分野の業務プロセスはソフトパッケージというツールのベストプラクティスに合わせるにしても、自社の強みとなるビジネスモデルや市場競争力強化を必要とする分野に関わるビジネスプロセスは、独自性を生かすためにカスタマイズをするか、独自システムを構築するかしなければならない。
ますおか・なおじろう
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授