業務改革を十分に行った上でシステム導入するのが理想だが、現実には逆転してしまうケースもある。その場合に後付けになる業務改革を成功させるには――。
IT導入成功条件の1つに、業務改革がある。ERP(Enterprise Resource Planning)を始めとするソフトパッケージを導入するに当って、従来業務にそのまま導入しても効果は期待できず、業務改革が不可欠とされる。
表現を変えると、ERP始めソフトパッケージは業務改革をするための手段とも言える。そもそも、ITは業務改革を進めるための一手段として位置づけられていて、業務改革をした結果IT化は不要であるというケースもあり得る。すなわち、業務改革はITに優先する。
こう考えてくると、業務改革をIT導入に先行すべきということになる。それに越したことはない。しかし、実態はどうか。周囲をよく観察すると、業務改革がされないまま、あるいは中途半端のままITが導入されるケースが多い。業務改革先行が理想だが、次善の策として実態に合わせてまずITを導入し、後から業務改革を進めて成功させる方法は考えられないのか。いや、業務改革が後からついて行く方をよしとする議論もあるくらいである。
業務改革とは何か。リエンジニアリング提唱者によれば、リエンジニアリング(業務改革)とは、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的な成果基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」である(マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピー「リエンジニアリング革命.企業を根本から変える業務革新」日本経済新聞社)。
システム導入に先行して業務改革ができれば、それに越したことはない。しかし、なぜ業務改革がされないまま、あるいはあいまいなままシステム導入されるケースが多くなるのか。
業務改革先行は、困難さを伴う。業務改革の議論をするには、従来業務のプロセスが明確に定義されなければならない。これはかなり手間のかかる作業だ。仮に定義ができたにしても、通常は既定のプロセスが良いものと思い込まれているから、苦労して定義した従来プロセスが思考の前提になるおそれがある。そうすると、従来プロセスから大きく飛躍した改革が期待できない。即ち、最初に業務プロセスの理想形を定義し、それに忠実であることが難しいために、残念ながら業務改革があいまいなままシステム導入されるのである。
さらに問題は、その後も業務改革があいまいなまま進んで行ってしまうことである。
そこで業務改革に適していると言われるERPだが、ERPは欧米先進企業のベストプラクティスを参考に開発され、テンプレートが集積されているので、ERPを参考に業務改革するのが手っ取り早いと言われる。
ただし注意を要することは、往々にしてERPはじめソフトウエアが業務改革を自動的に行ってくれるという錯覚があるということだ。ERPを導入すれば自動的に経営がリアルタイムで可視化され、納期が短縮され、在庫も減るというものではない。
従って、仮にシステム導入を先行させたとしても、その後何が何でも業務改革を成し遂げなければならない。業務改革をせずにシステム導入でよしとし、従来業務に固執して、組織変更や業務改革をないがしろにしたままでいると、システムの効果は期待できない。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授