部門それぞれで最適なIT導入を進めたとしても、会社全体での最適化につながるという保証はない。全体を管理し成果を上げるためには、やはりトップが鍵を握るのだ。
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IT導入を成功させるために関係者はどうかかわるべきか。経営トップからユーザー、外部のベンダー、外注先、さらに社内に潜むアンチIT族に至るまで検討の対象にしてきた。個々の関係者が今まで指摘したようにIT導入の基本に忠実に、適切関与したとき、果たして最適にIT導入を実現できるのだろうか。
物事は必ずしもうまくは行かない。「合成の誤謬(ごびゅう)」という言葉がある。ミクロが理に適っていても、全体が理に適っているとは限らない。ITへのかかわり方についても言えそうだ。その場合、どう対応するべきか。
「合成の誤謬」の実態例を見ていこう。中堅企業A社は、部門間やグループ企業間で継ぎはぎだらけのシステムを使っていたので、情報一元化のために、あるERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入することになった。ERPを導入するに当たって、業務プロセスをいくつか改革しなければならなかった。中でも重要だったのは、売り上げ管理を営業部門から事業部の調査部へ移すことである。営業には受注に専念させたいという意図があったからだ。
しかし、A社では長年にわたって営業がプロフィットセンターとして、売価決定、受注、売り上げ、売り掛け、回収、収益の把握までの管理を担っていた。大変な苦労もあったが、営業が社内で絶大な実権を握っていた根拠でもあった。従って、売り上げ管理の営業から事業部への移管は、営業において大問題となった。
まず、ユーザー部門である営業と、情報システム部門あるいはプロジェクトチームとの関係に焦点を当てる。営業は、売り上げ管理の移管に大反対だった。売り上げ管理は、製品を顧客へ完納したか、未納があればどれだけの量があっていつ完納するか、顧客の事情で納入日をどう調整するかなどの状況を把握しないといけない。営業として、それを事業部でできるわけがないし、何よりも営業プロフィットセンター制を部分否定することになるので、絶対譲歩できなかった。加えて、ユーザーである営業がERP導入費用を分相応に負担するため無関心でいられないほか、ERP導入を何が何でも成功させるという強い思いで取り組んでいたこともあり譲ることができなかった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授