課題の本質が見えない経営陣――接待に明け暮れ給料払えず間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

企業が抱える課題を明確に理解せずに、見当違いな行動を取るトップがいるとは嘆かわしいことだ。彼ら自身が変わらない限り、その企業に未来はない。

» 2008年10月09日 08時45分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

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 企業の課題が見つからず、どこから手をつけていいか分からないため、IT導入を検討できないというトップを見掛ける。これはIT導入以前の問題で、トップや経営者が自社の課題を見つけられないというのは、その地位に立つべき資格はない。

 明らかに課題を見つけることができない場合は問題外だが、見つけた課題が企業の方向性と大きくずれていたり、課題と思い込み取り組んでみたものの、実は問題を解決する本質的なテーマでなかったりすることも、課題が見つけられないケースといえる。

 そうした企業に課題解決の手段としてITを導入しても意味はない。それどころか、企業業績が好転しない理由を課題設定や解決方法の誤りではなく、ITのせいにされることがある。これでは経営はますます混乱する。

接待ゴルフが売り上げ増加につながるという間違い

 筆者の実務やコンサルティング経験から、課題を見つけられない例を紹介する。地方の某CATV配信会社、A社の例である。地方の有力者が出資し合い事業を始めた。社長は元地方政治家のB氏が就任した。B氏の自慢は総務省から事業認可を取得したことである。役員には出資者の中から地方の名士が数名選出された。

 新物好きのある役員は、CATV業ではコンテンツが死命を制するという大義名分の下に、地元大学の教授と思しき人物に身分不相応の研究費を提供してコンテンツ開発を依頼し、打ち合わせと称してしばしばゴルフや会食を設定した。営業が得意だと自称する役員の一人は、地方団体の幹部の接待に明け暮れた。視聴者の家庭を個別にアタックするよりも、効率的という理由だった。

 A社は数年経っても、加入者を増やせず売り上げが伸びなかった。当然、資金はひっ迫した。B社長の話では、もっぱら従業員の給料はB社長が個人的に負担しているということだった。この窮地においてもなおB社長は、「(総務省の)事業資格は、今からほかの業者には取れない。われわれが優位にある」と言ってはばからなかった。A社は課題をどう認識し、どんな手を打とうとしているのか、さっぱり見えてこない。

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