マイクロソフトのERP製品「Dynamics AX」は、稼働中の基幹システムと連携させるなど企業規模に応じた導入が特徴だという。
マイクロソフトは2007年6月、ダイナミクス・ブランドの第2弾となるERP製品「Dynamics AX」の国内販売を開始した。マイクロソフトは海外で4つのERP製品(AX、GP、NAV、SL)をリリースしているが、その中でもアーキテクチャが比較的新しく、拡張性があるAXを日本語化した。
AXは、ERPに開発プラットフォームをセットにしたイメージの製品だ。AXがフィットする規模感について、マイクロソフトは明らかにしていない。資料には「ユーザー数で50〜500人規模の基幹システムに適する」とあるが、幅がありぎて捉えにくい。規模感を固定しないのは市場を限定したくないからだろう。ただ、ERP製品は買収によってポートフォリオに加えたものであり、その経緯から推測することはできる。
マイクロソフトはERP製品を2社から2製品ずつ取得した。GPとSLはグレートプレーンズ社から、AXとNAVはデンマークのナビジョン社から取得した。GPとSLは北米のグローバル企業がそのまま使える製品。一方のAXとNAVは、小国が密集した欧州全域において規模があまり大きくない企業をターゲットにした製品で、最初からマルチ言語に対応する。多様な言語を持つ欧州では必須の機能だ。
北米と欧州のちょうど中間のポジションに当たるのがアフリカや東南アジア市場。日本市場のポジションもここだ。そのためなのか4製品が混在した状態にある。4製品のライセンス・フィーを比較すると、1ユーザー当たりのフィーはほとんど変わらない。AXが若干高いのは他の3製品よりカスタマイズ性が高いからだろう。
AXやGPを導入する企業は、システム規模が大きくユーザー数も多い傾向がある。では、AXやGPは小規模には向かないのかと問えば、そうでもないようだ。マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 マーケティング部 ERPプロダクトマネジャーである國持重隆氏によると「本社がAXを使い、支社店は規模が小さいからNAVでという議論は必ず出てくる。ただ、支社店を成長させていくのならNAVではいずれ限界がくる。2人しかいない支社店でもAXを入れるケースもある」ようだ。
現在のAXの顧客数はおよそ7500。新規案件の割合は欧州が4割強、北米が3割、アジアが2割から3割。1インストールの環境を3000人以上で利用している例もある。拡張性に関しては、数万人規模の実績はないが、SAPやOracleの領域に近づいている。
AXがターゲットとする市場を整理すると2つある。1つが売上高50億〜500億円程度の中堅企業向け市場。ここは基幹システムとしてAXを売り込む。もう1つが売上高500億円超のグルーパル企業だ。大企業ではすでにSAPやOracleのERPが稼働しており、事業拠点の拡大や新規事業が立ち上がると業務アプリケーションが必要となる。稼働中のERPに手を入れることも選択肢だが、カスタマイズや機能追加は大規模プロジェクトになってしまうため、部門サーバとしてAXを導入し、SAPやOracleと連携させるケースだ。
「フランスの某ファッションブランド企業はグローバルでSAPを使用しているが、支社店にはAXを展開している。マイクロソフトも同様に、本社はSAPだがXbox事業ではAXを使用している」と國持氏。Xbox事業はゲーム機の組み立てなどがあり、ソフトウェア製品の生産とは異なるからだ。生産計画や調達計画はAXで管理し、発注後の会計情報をビズトークサーバを挟んでSAPに渡している。やはり、せっかく安定稼働しているSAPに手を入れるのはリスクが大きいとの判断があったのかも知れない。AXを扱うMBS部門もAXで業務を再構築中だという。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授