組織をどのように設計するかは、そこに属する人を常に悩ませる。「日本に求められる組織設計のイノベーション」と題したトークセッションで、イー・モバイルの千本倖生氏と慶應義塾大学の上山信一氏それぞれが、組織に対する考えを示した。
11月22日、23日に開催された慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)主催の「Open Research Forum(ORF)2007」。23日のメインセッションの1つ「日本に求められる組織設計のイノベーション」では、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の金子郁容委員長がモデレーターとなり、イー・モバイルの千本倖生代表取締役会長兼CEOと、慶應義塾大学総合政策学部の上山信一教授が意見を展開する形でディスカッションが行われた。
NTTに入社した千本氏は、1984年に京セラの稲盛和夫氏と第二電電(現KDDI)創業し、それまで電電公社が独占していた日本の通信業界が大きく変えた。その後KDDIを離れ、ブロードバンド市場に照準を絞りイー・アクセスを設立、ブロードバンド普及をけん引した。そして今、次のビジネスチャンスを携帯電話市場に見ている。
「ブロードバンドの市場規模が1兆円であるのに対し携帯電話は9兆円といわれている。それだけの規模なのに、プレイヤーとなる企業が3つしか存在しないのはおかしい」と千本氏。日本の携帯電話料金が世界一高いという現状を変えるべく、イー・モバイルを率いる。「5〜6年後には世界で競争力を持つ企業になる」と千本氏は意気込む。
マッキンゼー・アンド・カンパニーでさまざまな企業のコンサルティングに着手してきた上山氏は、日本長期信用銀行の破綻など日本の低迷を経験する中で、日本のシステムそのものに問題があると感じた。
これまで1つの企業を支援する仕事をしていた上山氏が、活動の場を地域に移し、福岡市や大阪市役所の改革に取り組んだ。どのように組織を改革をすればいいか分からないと考える組織を変えていくことにやりがいを覚えたという。「これまでやってきたことは組織を外から動かすこと。その観点で地域や行政を変えていきたい」と述べた。
「日本の主流の中で作られる価値観は組織の外や日本以外の世界から見るとずれていることも多い。組織に縛られず、自分の力でやってみようという気持ちが強い」(千本氏)。
「医療や介護など、まだ何も手を付けられていない業界もある。大きすぎず、小さすぎずという規模で、具体的な改革を進めていきたい」(上山氏)
巨大な市場を変えるべく次々とベンチャー企業を興した千本氏と、個別の企業改革のみならず業界全体を変えようと地域や行政の活動に取り組む上山氏――両者の組織改革に対する考えがかいま見えた。
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明治学院大学 経済学部准教授