大成建設の理事で情報企画部長の木内里美氏は「経営とITにどっぷりと漬かった」と自らの活動を振り返る。
同社はかつて、社内のマスターデータ管理が原因で、さまざまな問題に直面していた。経営層ではITコストの増大が問題視されていたことから、それらを同時に実現すべく、一本化したタスクフォースが作られた。こうした活動に関わり続けた経験が買われ、現場からIT部門へと転身した。
「IT部門におけるわたしの目標は2つ。ITコストを5年間で3割減少させること、そしてシステム部門の改革だ」
大幅なITコスト削減のためには、システムの全面再構築だけでなく、ビジネスプロセスの全面的見直しも不可欠だと考えた木内氏は、経営企画室と一緒になって改革を押し進めた。
ビジネスプロセスに踏み込むだけに抵抗勢力が懸念されたが、建設業界の冷え込みの時期だったことや、木内氏自らが全国の現場を回って詳しく説明をする活動を行った結果、大きな抵抗もなく進んだ、と振り返る。
「その成果が出て、生産管理の現場でのコンピュータの使い方は大きく変わった。情報共有はもちろん、サプライチェーンも広く活用されるようになり、調達の9割近くはネット経由で行われるようになった。ITコストの削減目標も上回って4割減まで達成しており、さらに下がる見込み。当時の半分くらいまでは実現できそうだ」と胸を張る。
現在は、システム部門の改革に力を入れているところだ。
「むしろ、こちらの方が、抵抗が強かった。旧態依然の体質で、バックオフィスに徹しようとしていて、事業の現場に入り込んでくれない。そこは大変だった」
それでも今では、ユーザー部門に対するコンサルティング機能を持たせたり、IT部門の内部に独立した調達部署を組織するなど、体制を固めつつある。
「我々はプロセスの改革エージェントであり、サービス事業を行っていくものだという認識を持たせるようにしている」
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授