【第3回】世にもおかしな日本のIT組織(3)〜IT部門から消えた次世代三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/3 ページ)

» 2007年12月12日 09時00分 公開
[岡政次,ITmedia]

 わたしの周りでも、この人員削減でバブル新人は半分以下になってしまった。あの苦闘の3年間は何だったのだろう。せっかくエンジニアの卵として、これからの戦力になる人材を育ててきただけに実にもったいない話だ。

 異動後の彼らは、次から次へと転勤を課せられ、多くの人が会社を去っていった。これが10年後にボディブローのように効いてくるとは、このとき誰も予測していなかったことだろう。その後、IT部門への新卒の配属はなくなってしまった。

「丁稚奉公」で育つ真のエンジニア

 日本の企業の特徴なのかもしれないが、新卒採用の際には、理系、文系ぐらいの区分しか行われない。配属には、本人の希望も少しは加味されるが、特殊なスキルや技術を持っていない限り、どの部門に配属されるかは分からない。だから、IT部門に配属されたといっても最初はまったくの素人で、何もできないのが普通である。

 わたしが配属された当時は、今のIT部門は経理本部コンピュータ部という組織で、経理の組織の中にあるくらいの位置づけだった。組織の役割は業務の効率化ぐらいだ。

 素人のまま配属され、まず「コンピュータとは」「システムとは」というレベルの集合研修から始まり、アルゴリズム研修を受け、プログラムフローを書き、プログラミング言語の学習、プログラミング作業の実習を経て、プログラマーとして実務に就くには半年ぐらい掛かった。それから、プログラマーを1年、2年経験し、SE見習い、システム運用の実務などを2年ほどやって、やっとSEの業務に就くことができる。

 この間、特に決まったキャリアアップのプログラムがあるわけではなく、先輩の仕事をただ見よう見真似で覚えていくという「丁稚奉公」のような過程を経て、スキルアップしていくのだ。

 一人前になってからは、筋のいい先輩の仕事のやり方を盗み、自力でスキルとプロジェクトマネジメント能力を磨きながら力を付けていくことになる。だから、社内のシステム構築の手順や技術がすべてで、良くも悪くも「井の中の蛙」的な環境で育っていく。それも年代が途切れずに新卒が入社していけば、順送りで育成できる環境が生まれるのだが、10年も空白があると、そういう体制は崩壊してしまう。

次を育てられないIT部門

 新卒の教育もノウハウだ。誰でも新人育成が出来るわけでもない。OS、ミドルウエア、データベース、プログラミング言語、システム構築アーキテクチャが進化しても、システム構築の本質(ユーザーサービス、システム品質、システム運用性)は変わらない。その重要性は集合研修では身に付かない。良い先輩についてマンツーマンで覚えないと、自分のものにならないのだ。

 システムというのは、ユーザーヒアリングして業務要件を確定し、仕様どおりにつくれば、上手く動くというものでもない。現場の業務の正しい流れ、正しい人の配置、本来の業務の落ち着きどころや、業務の変化、組織の都合による業務フローの歪みなどを洞察し、それを加味した設計、隠し機能を盛り込んでおく必要がある。それがなければ、サービスインした途端にシステムは破綻してしまう。

 現場で使われないシステムとは、まさに起こるべくして起こっているのだと言える。これから5年、10年と経過するにつれて、さらに現場で使えないシステムを増産することつながっていくだろう。

 こうした「負のスパイラル」が進むと、社内でシステム開発を行える能力が失われ、ITによる事業戦略の差別化はほぼ不可能になる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆