社員の意識改革の必要性を感じた有馬氏は、2つの施策を打った。どんな変化にも対応できる組織を目指す「New Xerox Frontier運動」を通じて社内に方針の浸透を徹底し、組織の要となる1500名のマネジャーには、チェンジ・マネジメント・プログラムで意識変革を促した。
これらの取り組みは功を奏した。特に、技術や営業など部門の垣根を越えて行ったチェンジ・マネジメント・プログラムは、全社的な危機感とコミュニケーションを生み出し、仕事の進め方の改善につながっていった。業績も右肩上がりで回復し、2007年度の利益は95年度の2倍の規模に達するほどだ。
こうした社員の意識変革の取り組みを通じて、社員から寄せられた疑問が、有馬氏に“企業の在り方”を見直させる契機になったという。「社員の意識変革を進める過程で、ゼロックスとして今後、どんな価値観を共有すべきかとの話題が社員から上るようになった」のだ。
「企業としてのビジョンの必用性を痛感し、CSRをいかに捉えるべきかを真剣に協議すべきだろうと考えるようになった」
富士ゼロックスの「世の中に対する価値の提供」という使命は、こうして誕生したものだという。
コフィー・アナン元国連事務総長の提唱によって発足した「グローバル・コンパクト」(GC)の一員に同社が名を連ねるのも、この理念と一致しているからこそだ。CSRへの対応を進めることが、企業には多様なメリットがもたらされることに気が付いたわけだ。
「二酸化炭素の排出量の削減など、CSRの実現に向け企業はさまざまな課題に直面している。ただし、それらを乗り越えた暁には、競争力の強化や、新ビジネスの創造といった大きなメリットを享受できる」
コンプライアンスに代表される社内レベルでの取り組み1つをとっても、社内の不正防止の徹底につながり、ひいては成長に向けた機会損失の削減とっいた効果が期待できる。また、省エネ商品の開発など、消費者に対する取り組みは他社との差別化になる。環境に優しい技術は、カスタマーロイヤリティーやブランド力の向上につながってくる、という。
社員の意識改革の中から上がってきた声が、富士ゼロックスの経営陣に次なる価値を見つけ出すきっかけを与えたのだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授