日本企業はガラパゴス化してないか? NRIはそう警鐘を鳴らす。2015年、日本の内需は頭打ちになると同社は予測。BRICsと呼ばれる新興市場への対応が叫ばれるが、遅れが目立っている。
少子高齢化により国内消費の伸びはかつてのように期待できない。日本企業のグローバル化の必要性が叫ばれているものの、特に非製造業のグローバル化の遅れは顕著だ。
東洋経済新報社の『会社四季報』2007秋号によると、上場企業の2006年度の海外売上高比率は全業種平均で10.6%。製造業は20.2%とグローバル化が進んではいるが、非製造業は3.1%と遅れが目立つ。
「いつまでも国内に依存していると大変なことになってしまう」と、野村総合研究所(NRI)のコンサルティング事業本部情報通信・金融戦略担当部長の吉川尚宏氏は警鐘を鳴らす。
NRIの予測によると、日本の人口減少だけでなく、世帯数の減少も始まり、内需頭打ちが鮮明になるのが2015年。日中のGDPの逆転や、ASEANに経済共同体が設立されるなど、経済の1つの節目を迎える。このままグローバル対応に遅れれば、世帯の減少や高齢化による支出の減少で、大きな影響を受ける企業が続出しかねない、と危惧する。
「グローバル市場は今後BRICsに代表される“坂の中の雲”の成長が著しい」
「坂の中の雲」とは、NRIの造語。司馬遼太郎の歴史小説『坂の上の雲』をもじった。日本は明治維新以来、欧米の列強に肩を並べようと、豊かさを求めてきた。これを象徴する1人当たりのGDPが3万ドルを超える先進国市場を「坂の“上”の雲」と呼び、それより下の3000ドル-5000ドル未満の新興国市場を「坂の“中”の雲」と呼んでいる。
「坂の中の雲」には中国や旧ソ連邦の国々が入り、この市場が今後急速に伸びる唯一のエリア。この対応が遅れれば、今後の先行きは厳しいというわけだ。
日本企業が新興国に対応する際に危惧されるのは、「ガラパゴス化現象」だという。
「坂の中の雲市場へは、日本固有の仕様や標準では進出できない。閉ざされた市場で独自進化ばかりを遂げた日本企業は、ガラパゴス諸島の珍獣のようだ。保護されないと生きていけない、一部の種は絶滅の恐れがある」と、吉川氏。
その顕著な例が携帯電話だ。端末の機能やサービスは世界トップ水準にあるものの、グローバルでまったくシェアを持てていない。グローバルでは携帯電話の通信方式の約7割を占めるGSMに、積極的に対応してこなかったためとされるが、国内市場にとらわれた結果、日本の携帯電話端末メーカーすべてを合わせても、トップのNokia1社にもかなわないというほど、ガラパゴス化が進んでしまった。
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明治学院大学 経済学部准教授