カネをドブに捨てるプロジェクトの責任はトップにある間違いだらけのIT経営(2/3 ページ)

» 2007年12月27日 11時20分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

ドラッカーが指摘する企業トップの任務

 企業トップの任務は何か。最近の次々起こる企業の不祥事を考えるとピーター・ドラッカーが、「組織は社会の機関である。外部環境に対する貢献が目的である。しかるに組織が成長するほど、特に成功するほど、エグゼクティヴの関心、精力、能力は、組織内部の事象に占領され、外部の世界における本来の任務と成果が忘れられていく」(「経営者の条件」ダイヤモンド社)と指摘するように「社会貢献」を前面に押し出したくなるが、トップの任務は企業の「存続と発展」であろう。

 そのためにいろいろな戦略が組まれ、戦術が実行されるのだろうが、そこにITを駆使するか否かはトップの判断である。ITは、あくまでも目的達成のための手段であるから、敢えてITに頼らなくても目的が達せられるなら、それもよしとすべきである。ITを導入すれば目的が達成されると単純に考えるのは間違い、と言えば、「そんなことは当たり前だ」と答える経営者は多い。しかし現実の導入を見ていると、トップから現場スタッフまで、最終目的が何なのかが忘れ去られ、システムの稼働が目的化してしまうケースは吐いて捨てるほどある。企業の存続と発展にブレーキをかけるようなIT導入をするぐらいなら、IT抜きで何ができるのかをまず考えるべきだ。

 しかしIT抜きの施策に限界を感じたら、素直にITを有効な手として検討する対象にすべきだろう。

 ITを選択するからには、トップとしてITを理解し、ITに適切に関与しなければならない。ITを理解せず、適切な関与をしないために、多くのトップは間違いを犯してきた。

 IT投資は、製造設備や物流の投資と比べて内容も効果も目に見えにくいので、トップはつい関与を避ける。目の前でラインが動き、製品がこれまで以上のスピードで出荷される、といったような「絵」は見えない。ソフトウェアなど全く分からないことなので、専門家に任せっ放しにしたくなる。一方、ちょっと尋ねても専門用語が飛び交うので、つい敬遠したくなる。しかし目に見えないといえば、顧客の心理、マーケットの動き、世の中の流れ、さらには社員のモチベーションも含めて、すべて、目に見えないことだらけだ。こうしたことに関しては、たとえ「見えないモノ」であっても経営者は本能的に必死でその中身を探ろうとする。システムも見えないけれど、中身を探ろうと努力すれば、何がベストの選択なのかは見えるようになってくる。

 また逆に、ITに対する中途半端な知識が災いして、ITに干渉し過ぎるトップもある。発言がまったく筋違いであっても、トップの発言は部下に強力な影響を与え、プロジェクトの方向性を決定してしまう。間違っていればたとえ社長の指示であっても、正す人間が組織の中で発言力があればいいが、いつもそうしたクッションがいるとは限らない。せっかく経営改革のための手段として選択したからには、有効に使いたい。

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