向川氏によれば、大塚商会がコンサルティングしている企業でも、必ずしも理想的なスケジュールで進めている企業ばかりではないようだ。業務プロセスの見直しから、ドキュメント作成、監査計画の策定まで、大きな「ヤマ」に差しかかって、積み残している課題を抱えているケースもある。
「IT統制については、ワークフロー関連のソフトを新たに導入しただけで事足りると考えている企業もあるようです。それだけでリスクコントロールが本当にできるのか、見直しを迫られた時、対応する余裕がどれだけあるのかまで、考慮に入れておく必要があるでしょう」(向川氏)
内部統制監査への対応が、パッケージ導入ですべて対応できる、といった誤解について向川氏自身まったくナンセンスな話だと語る。
例えば大塚商会にはERPパッケージ「SMILE」シリーズがあるが、コンサルティング推進グループでは、コンサルティング業務が主体であると向川氏は強調する。
「内部統制への対応は、その企業が生まれ変わるきっかけとして、前向きにとらえるべきです。あいまいでリスクの高い業務を見直し、より高いステージに上がるための苦労だと考えて取り組む価値のあるものなのです。それに合わせてどのようにITを対応させるかは、綿密な計画と実行力があってこそ威力を発揮します。パッケージありきですべて乗り切るという発想はそもそもあり得ないのです」
2010年以降、対応に遅れが目立つような企業が増えれば、猶予期間が与えられるという話もちらほら聞こえるが、いずれにしても、各フェーズでのスケジューリングを着実に進めていき、その場しのぎの対応を避けるべきだろう。
ドキュメント作成、監査計画策定などとIT統制の作業が重なり、業務そのものにブレーキがかかるようなことにならないよう、今後のプロジェクト管理能力が問われるところだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授