いよいよ本格化する内部統制監査に向けての準備作業。IT全般統制作業も含めて、各作業のスケジューリングが成功の鍵を握る。
ある内部統制に関するコンサルティングにかかわるコンサルタントはため息まじりにこんな話をしてくれた。「まだまだ全体のスケジュールを把握して準備を進めきれていないクライアントがいる。とにかく不明点を列記して、1つひとつ答えてくれというところもある」。
財務報告に係る内部統制報告までの全体スケジュールは、一般的なケースとして内部統制の整備に前年度の続きから2008年度の1年数カ月、運用評価に2009年度以降の1年の期間にあてることが多い。
整備には、業務フローのチャートとそれらを文章にした業務記述書、そしてその業務プロセスで、想定される財務上の虚偽記載のリスクとそのリスクコントロールについてまとめたリスクコントロールマトリクス(RCM)が必要となる。
ただ、この3点セットと呼ばれる文書を作成するには、そもそも業務を見直して、改善作業を行う必要がある。最終的に財務上虚偽記載の可能性が高い業務フローは最初に芽を摘んでおかなければならないからだ。放置したままでいるとRCMを作成する段階で、抜け穴だらけの統制しかできていないことが露呈してしまう。
「内部統制への対応は本来、企業の改革を推進するアクセルになるはずのものです。ただ業務プロセスの見直しがうまく進まなかったり、不完全な改善に留めた業務プロセスをITに置き換えようとして、結局もう一度業務プロセスに立ち戻ったりと、ブレーキになってしまっているケースもあるようです。来年からは対応初年度として運用していかなくてはなりません。そこでアクセルを踏もうとしても、同時にブレーキも踏まざるを得ない状態では、後戻りも難しくなってしまいます」
そう語るのは、大塚商会 技術本部 コンサル推進グループ 向川博英部長だ。
大塚商会では、現在約30社の上場企業の内部統制に関するコンサルティングを行っているという。企業によっては、IT統制だけを依頼する場合もあるというが、主として、業務改善、3点セット作成も含めたトータルコンサルティングを依頼しているとのことだ。
大塚商会自体も1993年からITによる経営革新を掲げた「大戦略プロジェクト」を5年かけて取り組んだという経験を持つ。与信、見積書の作成、送付など細かな業務でのリスクを見直していったこのプロジェクトは、現在の内部統制監査への対応と、内容としては類似点が多い。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授