昨年後半から世界経済を大きく揺り動かしているサブプライム問題、原油価格の高騰などに加え、新年早々には株安が追い打ちをかけ、波乱含みの2008年を迎えた日本経済。そうした状況の中で、ITには何が求められているのか。
2008年のIT市場に大きな影響を及ぼすとみられる動きで、ITベンダートップの多くがキーワードとして挙げたのは、「内部統制」および「環境」への対応である。
「今年は、J-SOX法の本格運用や内部統制に絡んだ企業ニーズの顕在化に伴い、変化の大きい1年になる」(大塚商会 大塚裕司社長)
「今年の日本のIT市場は、法令を順守した企業活動を推進するために、内部統制、セキュリティの強化が進む。また夏の洞爺湖サミットを控え、地球温暖化、省エネルギーへの意識が一層定着し、環境へ配慮したIT機器やデータセンターのグリーン化の需要がさらに高まってくる」(サン・マイクロシステムズ 末次朝彦社長)
「CO2排出量を大きく抑制できる製品やサービスを積極的に創り出して広めていくことは、高度な技術を持つ者にしかできない。技術を通じて社会に貢献することを創業以来の理念とする当社にとって、未来の地球環境が危ぶまれる今こそ、大いに奮起すべき時だ」(日立製作所 古川一夫社長)
「環境問題への対応に代表されるように、社会、さらには地球規模で解決策が求められるマクロな課題が顕在化してきている。まさにグローバル時代は新しい段階に移行しつつあり、世界の中で日本の果たす役割が、今一度、問われ始めている」(日本アイ・ビー・エム 大歳卓麻社長)
このほか、ITベンダートップの年頭挨拶では、今年商用サービスが開始される「NGN(Next Generation Network)」、オンデマンド・ソフトウェアサービスとして本格的な普及が見込まれる「SaaS(Software as a Service)」、効率的なシステム運用を実現する「仮想化技術」といった言葉を、キーワードとして取り上げているのが目立った。
こうした中で、新たな成長に向けてトップの並々ならぬ決意を感じさせるメッセージも印象に残った。
「社会が大きく変化する中で、今年を新しい時代のNECグループ創りに向けた新たな成長の一歩とするためには、これまでのやり方の延長ではなく、変化を恐れず、なおかつ危機感を持った取り組みが必要となる」(NEC 矢野薫社長)
「今年の課題は、これからの日立の新たな成長へのストーリーをつくること。そして、その実現のための種を着実にまいて、勝ちパターンを築いていくことだ。全社をあげて明確に成長を指向してほしい」(日立製作所 古川社長)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授