ローランド・ベルガー遠藤会長によると、強い企業に共通するのは「強い現場を持っている」という点にある。現場力の活用に成功している企業こそが元気な企業の秘けつのようだ。
競争力の源泉はどの企業も「現場」にある。分厚い中期経営計画書や、本社の会議室にあるわけではない――早稲田大学大学院教授でローランド・ベルガー会長の遠藤功氏は、「現場力」を提唱していることで知られている。
大塚商会が開催した「実践ソリューションフェア2008」で、遠藤氏は「現場力」の向上を説いた。
遠藤氏は、強い企業に共通するのは「強い現場を持っている」という点にあると考えている。
例えば、小林製薬は「アイデア力」を現場に求めている。現場の社員たちに新商品のアイデアを募集し、それを積極的に商品化する手法で、業界中堅でありながら強い競争力を身に付けた。一時期、その商品化が滞った時期があったものの、機能別の縦割り組織を事業ユニット組織へ再編し、アイデアに対する積極的な表彰などの工夫で、一時は低迷したアイデア力の復活に成功した。
「小林製薬では、商品カテゴリーごとのアイデア合宿を毎月行っている。社員全員がとことん考えをぶつけ合う。この『ドロドロ開発』が、良い結果を出している」(遠藤氏)
衣料品販売のしまむらは、徹底したマニュアル化が現場の競争力だ。パート従業員が多いという点では業界のほかの企業と同様だが、現場力の活用によってそのマニュアルを「トヨタばりにカイゼン」(遠藤氏)し、全従業員の84%にのぼるパート従業員の戦力化を可能にした。
「会社は従業員のもの、という思想がある。パート出身の店長は960店中562店と、積極的な戦力化を進めている。社員旅行には90%、新年会には99%が参加するというから、ものすごい団結力だ。団結力は現場力の指標だ。その現場からマニュアルの改善提案が毎月3000件も出され、3年で内容はガラリと変わるという」(遠藤氏)
そして、近年になって大きな人気を集め、年間来園者数は2006年で304万人、東京の上野動物園を上回って日本一となった旭山動物園。しかし1995年には28万人にまで落ち込んでおり、閉園の危機に立たされていた。この日本最北の動物園が起こした奇跡も、まさに「現場力」のなせる技だったという。
「彼らは、自分たちの理想の動物園を14枚のスケッチにまとめ、それを1つずつ手作りで実現してきた。経済的な理由もあって、珍しい動物などの『客寄せパンダ』には頼れない。だが情熱と知恵はある。現場の夢と理想であった、動物本来の動きを来園者に見せる行動展示という手法を、10年以上かけてコツコツと実現していった。差別化のヒント、イノベーションの源泉は現場にあるのだ」(遠藤氏)
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明治学院大学 経済学部准教授