そもそもシステム導入に対するベンダーの立場は、いかなる場合も「ベンダー主導」で行くと決めておかなければならない。世に「ユーザー主導」の掛け声が闊歩しているが、しょせんユーザーはベンダーに比べるとシステム開発力・構築力は劣る。たとえ超大企業といえども、システム導入は各事業グループ、各事業部、あるいは各事業所で行われ、それぞれの情報システム部門がその取りまとめに当る。世に名だたる超大企業だから情報システム部門の力はあるだろうと思うが、各事業部門に降りると必ずしもそうではない。ましてや、中小企業においておやである。
そこへ、「ユーザー主導」と言っても、その実力はたかが知れている。「ユーザー主導」の掛け声は、ユーザーに参画意識を持たせ、システム導入後にユーザーに自分のシステムであると認識させるための手段にしか過ぎないと、ベンダーは考えた方が良い。
例えば、「要件定義」である。「要件定義」はユーザー主導で行われるべきと一般的に言われる。しかし、ユーザーがどれほど自分たちの要求を整理できているのか、自ら持つ潜在的要求をどれほど整理して表現できるのか、抱える問題をクリアにしてそれを解決するための要件にどれほど整理できるのか、はなはだ疑問である。経験豊富なベンダーが、ユーザー主導と見せかけながら、ユーザーをうまくリードしつつ、仕様の要求や問題点とその解決方法を聞き出し、整理していかなければならない。
仮に「ユーザー主導」と宣言されても、腹の中ではベンダー主導で行くと決めて、表面上はユーザー主導の形を作ってユーザーに花を持たせておいて、実質的にユーザーを指導しなければならない。それが、プロのベンダーとしての務めである。
そういう心構えがあれば、冒頭のベンダーに対する不満を解消させることができる。
ますおか・なおじろう 日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを歴任。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。現在は「nao IT研究所」代表として、執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授