社会や環境への貢献を目的とした商品やサービスが相次いで登場している。企業がイメージを向上するための一方的な戦略ではなく、消費者のニーズの高まりが大きく影響しているという。
CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)、環境、健康、ロハス、エコロジー、社会企業家、ソーシャルマーケティング、etc……、近年のトレンドワードには、企業側から見ても生活者側から見ても1つの共通項がある。
古くはライブドア事件から、今日のサブプライムローンの破たん、都市を中心とした不動産高騰のピークアウトなど、経済的利益のみを追求する社会のあり方が崩れ始め、社会や環境とのかかわりを重視する新しい価値観が台頭してきた。
また超資本主義先進国の米国では、ITベンチャーブームの後、社会問題を事業によって解決するために社会企業家(ソーシャル・アントレプレナー)と呼ばれる、ベンチャー企業を起す人たちが増えてきている。
もともと米国では、利益追求中心のマーケティングに対し、社会とのかかわりを重視したソーシャルマーケティングという概念があったので、社会企業家も近年突然生まれたわけではない。ただし、上記したような社会環境(経済情勢)の変化から、こういった概念を志向する人が増えてきているのは明らかだろう。
企業におけるCSRの定義はさまざまだが、1つに持続可能な社会を実現するための環境問題への取り組みという観点が挙げられる。CSRはそもそも利益追求ではなく、むしろ社会に対しての利益の還元なので、ビジネスとは相反するものであるはずだ。
しかし近年、生活者サイドのニーズとして健康や環境問題が一般化してきている中で、ビジネスとの連動が始まってきていることも確かだ。
分かりやすい事例は、ボルヴィックの「1L for 10L」のコミュニケーションだろう。ボルヴィック1リットルを買うとアフリカに清潔で安全な水が10リットル生まれるという活動だ。
あのCMを見て、同じミネラルウォーターを買うならボルヴィックにしておこうかと考えた方も多いはずだ。そうなるとボルヴィックという商品は他社のミネラルウォーターにはない付加価値が商品につくということになる。
企業側は売り上げが増加し、消費者は購買における心理的欲求を満足させ、社会活動にも役立てる。いまだ数少ない成功事例の1つである。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授