全世界に拠点を構えるシャープが「UI革新」と銘打ったIT戦略を掲げている。その根底には、ビジネスの状態を分かりやすく把握し、迅速な経営判断をするという基本に忠実な考え方があった。
液晶テレビや太陽電池などの事業を柱にグローバルにビジネスを展開するシャープ。全世界に拠点や工場を構え、現地での製品販売にも力を入れる。その戦略を支えているのが同社の提唱する「UI革新」というコンセプトだ。7月23日に開催した「SAP BUSINESS SYMPOSIUM '08」にはシャープでITシステム推進センター副所長を務める端坊辰彦氏が登壇。IT戦略について紹介した。
UI革新とは文字通り、ユーザーインタフェースに力を入れたITシステムを構築しようとするコンセプトだ。シャープはこれまで基幹システムの構築などをIT戦略のベースとしてきた。同社が展開するIT戦略の次の一手となる考え方がUI革新にあたるという。
端坊氏は、UI革新の一端を、社長室に設置している大型液晶ディスプレイを例に挙げて説明した。液晶テレビ「AQUOS」を採用した65インチのディスプレイには、全世界の拠点の販売在庫や進ちょく率などが図やグラフでリアルタイムに表示される。社長は世界中の拠点の経営状態を直感的に把握できるという。情報の表示には「エグゼクティブ・コックピット」と呼ばれるソフトウェアを使っている。
こうしたディスプレイは「言葉を必要とせず、感覚でオペレーションができる」(端坊氏)のが特徴。シャープは「EC(電子商取引)サイトで買い物をするユーザーが説明書を読まないのと同じように、基幹システムを使うユーザーがマニュアルに頼らなくてもいい仕組み」(同氏)の構築を目指している。
「日本の企業は、ERPなどのパッケージ製品の開発では欧米に負けるが、工業デザインや美しさ(という感覚)へのこだわりでは負けない。この精神をユーザーインタフェースの開発に取り入れ“サムライUI”として日本から世界に発信したい」(端坊氏)
シャープはロシア、ブラジル、インドなどの市場に重点を置いて各種ビジネスを展開している。全世界の拠点や工場を管理して、ビジネスを円滑に進めるには、各拠点の状態をリアルタイムに把握し、迅速かつ的確に経営の指示を出せる環境が必要となる。
同社が着手したのは基幹システムの刷新だ。欧州、中国、アジア、日本、米州をまたがる60拠点のうち、58拠点のERPをSAP製品で刷新。2009年度までに残りの2拠点にもERPを導入し、最終的にはこれらを5つのシステムに統合する予定という。
世界規模で経営を統合するために、「いままでに導入してきたERPのことは忘れた」と端坊氏は振り返る。これまでは、情報システム部門主導でシステムを構築してきたが、通貨の設定ミスなどヒューマンエラーをゼロにすることはできなかった。端坊氏は「ユーザーが使えないシステムは意味がない」ことを痛感した。この反省が、UI革新というコンセプトの誕生につながっていった。
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明治学院大学 経済学部准教授