次世代高速無線通信技術「WiMAX」の商用化など、2009年はブロードバンドサービスがさらに本格化する1年といえる。データ通信の高速化に伴い、機械同士が人を介在せずに自動的に情報交換するシステム、いわゆる「M2M」の活用範囲も広がるという。
M2Mとは、Machine to Machineの略である。機械と機械を通信でつなぐことにより、業務を効率化したり、新たな付加価値を生み出す活動を意味する。現時点でM2Mと言うと、自動販売機の商品の売れ行きや在庫を遠隔から確認し、無駄のない補充に役立てる、エレベータを遠隔監視する、自動車の位置情報などを把握し効率的な配車や経路誘導を行うなどというものが代表的な応用だろう。どちらかというと、無線を用いてそれほど大量なデータのやりとりを前提としないというイメージが強く、通信料金が高くならない範囲での利用に限られていた。
しかしながら、ADSLや光ファイバの低価格化による普及が、大量データの扱いを可能にさせた。例えば、デジタルサイネージという今注目を浴びている電子広告媒体へのコンテンツ配信にADSLが使われ始めている。大容量データの配信が必要だからだ。2006年8月からは、気象庁により緊急地震速報サービスが提供されるようになった。このサービスでも光ファイバやADSLが活用されている。一刻を争う事前情報提供というものなので、リアルタイム性に問題の少ないブロードバンドでなければならないからである。
いわゆるプリクラにおける画像配信などにも今やブロードバンドが使われ始めている。プリクラでは撮影した画像を携帯電話に送るサービスが提供されているが、人気が高く繁忙期においてはすぐにデータが届かない状況が頻発していた。そこで、プリクラの機械からの画像配信にADSL回線を利用することにより、データ処理速度を上げ、顧客満足度の向上を実現した。「ちりも積もれば山となる」ということへの対応である。
このように、M2Mは質、量ともに、地道ではあるが確実に拡大している様子が見てとれる。2009年は、無線や移動体でのブロードバンド化が本格的に進み、有線のブロードバントと遜色(そんしょく)のない環境に近づく最初の年である。HSDPA(3G携帯電話方式「W-CDMA」のデータ通信を高速化した規格)のさらなる高速化や、WiMAXおよび次世代PHSの商用サービスが開始される。2010年以降には、LTE(Long Term Evolution:携帯電話の高速なデータ通信仕様)も開始される様相だ。これまでのブロードバンドは固定通信が中心であったが、これがモバイルの世界にも広がり、コスト面での課題を除けば、技術的にはM2M応用の範囲が格段に高まるだろう。
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