「医療」を理解しない投資家は退場すべき【新春特別企画】コミュニティーリーダーが占う、2009年大予測(1/2 ページ)

医療とは患者やその家族を救うことを第一に考えるべきであり、それらよりも利益を優先して医療機関に投資する人たちは即刻退場しなければならないという。

» 2009年01月28日 12時17分 公開
[米井嘉一(同志社大学),ITmedia]

 医療を取り巻く環境は現在、最悪の状況といえる。しかし、子どもを抱える親たちの活動や市民運動などで産科医療や小児科医療をなんとかしなくてはという機運も生まれ、わたしが接する機会のある厚生労働省の方々にも心意気が感じられるようになった。2009年の医療は必ず「上向く」はずである。

 常に問題となるのは財源。タバコは肺がんや動脈硬化、酒は肝疾患や神経疾患、道路は交通事故と直接的に関係があるので、タバコ税、酒税、道路特定財源は医療費を負担すべきである。2009年こそはタバコ増税を実現させたい。

 独立行政法人 国立栄養健康・研究所が統廃合され「国立健康医薬総合研究機構(仮称)」となる。たとえ統廃合がリストラ的であったとしても、新しく生まれる新組織が米国NIH(National Institute of Health)に匹敵する画期的な将来構想を持つことを期待したい。国立病院機構をはじめがんセンター、循環器病センター、長寿研究所、国際医療センター、母子センター、精神神経センターと機能的ネットワークを構築することによりはじめて可能となる。誰がかじ取りを担うのか、それが問題だ。

予防医学は重要性を増す

 食習慣や運動習慣は健康に大きく影響する。抗加齢医学を含む予防医学はますます重要になるだろう。ウォーキングのような適度な有酸素運動は高血圧、糖尿病、脂質異常症、内臓肥満、認知症の予防と管理に有用である。日本ウォーキング協会、スポーツ健康指導士、医師法42条認可のスポーツ運動施設が互いに連携して地域住民の健康増進を目指すシステムが小規模ながら少しずつ広がっている。昨年の「2008年予測」では、都道府県別寿命ランキング「福井県がトップ」は大きく外した。車社会の影響で筋年齢、骨年齢の衰えが予想以上だった。原因さえ分かれば予想は簡単、県民の平均歩行数が高いところが上位にくるはずだ。

 食の安全について言えば、2008年は「事実告知(disclosure)」の時代であった。主なものは出尽くしたろうが、今後もパラパラと見つかる可能性がある。2009年は新たなルール作りの年である。産地、生産年、流通経路、添加物など安全に関する情報の表示義務と罰則規定に関する法整備が望まれる。わたしが2008年に訪れた地はEU(フランス)と南米(アルゼンチン)であるが、農業・酪農にかける国家的意気込みは凄まじい。そして田園風景が美しかった。田んぼや畑は単なる食料生産の場ではなく、環境保全の場である。助成するのであれば、農作物を作らなかった人に補償するのはなく、農作物を作った人に保障すべきである。2009年は食料自給率がやや向上するであろう。

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