草食系と小バカにするな、企業でも存在価値あり生き残れない経営(3/3 ページ)

» 2009年05月19日 08時15分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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肉食の度が過ぎるのも考えもの

 筆者が現役部長のころの話である。ある日トップと一緒に出張したとき、電車の中でトップは「A君とB君のような部長が、あと2名いてくれると助かるのだが」と話していた。A、Bともに肉食系の典型だった。存在感があり、実に積極的で仕事ができた。トップが同じタイプを所望するのももっともだと思った。

 しかしAには悪い癖があった。しばらくしてゴルフのスコアをごまかすことが広く知られることとなった。先輩部長に注意をされてもその癖は治らず、やがて社内で信用を失った。Bは自己保身が強く人の痛みを理解せず、部下の面倒も先輩の面倒も見ることができなかった。気が付くと周囲に誰もいなかった。A、Bともに一時は目の前の業務実績を上げたが、肉食がこうじて人を食ってしまったのだ。

 一方、のんきに肩を並べて草を食む草食系の同僚や部下は、企業への派手な貢献はないが、勤務査定の時に彼らの持ち点が肉食系へ献上されたり、透明で公正かつ健全な業務が彼らによって支えられたりしていることを思うと、危険な肉食系よりかはよほどマシな存在だ。

草食系同士で支え合う

 最後に、供給と需要面の話である。前掲の日本経済新聞によると、「心地よいコミュニケーション」を経営のキーワードとし、規模や収益にあまり関心がなく、M&Aや派手なオフィスにも関心はない、そういう草食系のネットベンチャー企業のフロンティアは広がるという。その代表であるアマゾン、グーグル、ヤフーなどは、規模を競ったトヨタやソニーのような肉食系が凍える氷河期に、現金などの皮下脂肪で寒さをしのぎ、環境適応の進化を遂げる。その草食系企業を、車にも海外旅行にも高級ブランドにも興味を示さず、大量消費や所有と無縁の草食系の利用者が支える。しかし、この傾向はあえて草食系と定義しなくても存在していた。彼らはニッチを狙う企業、消費者として存在意義を示してきた。

 かくして草食系は、存在の意義が十分にあるし、大事にしなければならない。


プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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