勉強会の第2回が始まった。前回決定したテーマについての問題解決に取り掛かる。川口は、検討を始めるにあたって、問題のとらえ方と問題解決の流れについて説明した。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ
2回目の勉強会が開かれる日の夕方、川口は少し早めに会議室で準備をしていた。会議机を向かい合わせて、その上に少し大きめの付箋紙の束、サインペン、模造紙などを並べておいた。
襟高ボタンダウンにノーネクタイの宮下と、藍色のカジュアルシャツに白のカットパンツ姿の奥山が予定の6時ちょうどにやってきた。ご多分にもれずあかり食品にもクールビズはすっかり浸透していたのだ。
二人を待ち構えていたように川口は説明を始めた。「今日から数回にわたり、前回決定したテーマについて、問題解決のための検討をしようと思う。まずは、その前の問題のとらえ方や問題解決の一般的な流れについて説明しておこう」。川口は事前に作っておいたパワーポイントの資料を二人に配りながら続けた。
「『問題』というと辞書的にはいろんな意味があるが、ビジネス上の問題解決においては『問題』を現状と理想のギャップととらえると分かりやすい。本来はこうありたいという姿に対して、現状はそうなっていないとする。例えば、自分の理想する体重が65kgなのに運動不足で70kgになっていたとしたら、この差5kg分が問題となる。問題が解決されるということは、このギャップがなくなることを意味する」
当たり前すぎる説明のようだが、なるほど分かりやすい。
「ただし、ビジネス上の問題は、今の例のように単純な計算で導き出されるようなものではない。ビジネスにおける問題のほとんどは、唯一解の問題ではなく多数解の問題だ。複数の原因が1つの問題を引き起こしていたり、ある問題が別の問題を引き起こしていたりという状況もビジネスの世界では頻繁に見られる。問題自体が複雑で、全容をとらえにくいという場合も多い。俗に、“根が深い”と言われる問題は、このように複雑に絡み合ったものを指しているのだ」
「さらに、問題には顕在化している問題と潜在的な問題がある。顕在化している問題とは、『売り上げが2年連続で落ちた』、『商品の不良が見つかった』といったもので、いわば発生してしまった問題だ。一方、潜在的な問題は、『社員のモチベーションが低下しているのではないか』、『競合他社よりも商品力が落ちているのではないか』といったもので、危惧や懸念の類といえる。問題の解決にも対症療法的な解決もあれば、抜本的かつ恒久的な解決もある。潜在的な問題に対しては、予防対策的な解決も重要となる」。川口の説明を二人は黙って聞いた。
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明治学院大学 経済学部准教授