「新しい発明は努力ではなく技術者の楽しみから生まれるのだ」――タイトー・三部CTOエグゼクティブ会員の横顔(1/3 ページ)

「根っからの技術オタク」だと自身を評するタイトーの三部氏は、ゲーム産業の発展に寄与したほか、世界初の通信カラオケを生み出した。日本では冷遇されつつあるエンジニアたちにエールを送る。

» 2009年08月05日 08時15分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

 欧米諸国と比べてエンジニアが冷遇される傾向にある日本。「3K」などとやゆされ、特に若手の人材不足が深刻化している。タイトーの技師長 執行役員(CTO)でキーテクノロジー研究センター長を務める三部幸治氏は「エンジニアや研究者による新しい技術開発こそが次の時代をつくるのだ」と強調する。


タイトーの技師長 執行役員でキーテクノロジー研究センター長を務める三部幸治氏 タイトーの技師長 執行役員でキーテクノロジー研究センター長を務める三部幸治氏

インベーダーゲームがきっかけで

――現在の業務内容について教えてください。

三部 現在所属しているキーテクノロジー(KT)研究センターは、自ら希望して2006年に創設しました。ゲームセンターなどに提供する業務用ゲームや家庭用ゲームの開発部門、携帯コンテンツ部門などが必要な新技術やその応用企画を横軸でサポートしながら、新しい技術やトレンドを社内に取り入れる役割を担っています。KT研究センターを設立した動機は、新しい物事を生み出さなければ次の時代は来ないという思いがあったからです。


――これまでどのようなお仕事を手掛けてきましたか。

三部 わたしは1979年にタイトーに入社しました。それまで別の業界にいたのですが、前年にアーケードゲーム「スペースインベーダー」が登場し、これは面白いと思い転職しました。入社後は業務用ゲームの開発に携わり、1985年には家庭用ゲームの開発部門を立ち上げました。1980年代にタイトーが発売したゲームの多くにかかわったと言えるでしょう。

 1989年に新技術を研究開発する部門に移り、しばらくして世界で最初の通信カラオケを考案し後にこの部門は事業本部になりました。当時全盛だったパイオニアのレーザーディスクカラオケに比べて、通信カラオケは、曲の数が無限であること、曲入れ替えの手間がないこと、曲提供が早いことなどが受け大きく広がりました。その後、1995年に家庭用の通信カラオケを開発展開し、これは今でも使われ続けています。順風満帆に見えますが、本来であれば新しい技術を生み出すための研究開発部門が、通信カラオケの考案で、いつの間にかカラオケに関する技術の事業部門になってしまいました。

 1999年には家庭用通信カラオケ部門のメンバーを中心に携帯電話のコンテンツ開発と展開を始めました。そして7年ほど経った折、携帯コンテンツやカラオケはビジネスとしては面白いけれど、やはり新しいものをつくりたいという思いが強くなり、当時の社長の理解を得て、研究開発部門をもう一度立ち上げました。

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