民主党政権の発足により、原口総務大臣は通信や放送に関するタスクフォースを結成。従来の省庁の政策とは大きく異なる方針を打ち出す。
今年の新語・流行語大賞に「政権交代」が選出されるなど、その一挙一動が広く注目されている民主党。政権交代直後からマニフェスト(政権公約)に基づき、矢継ぎ早に施策を打ち出して構造改革を推し進めている。
原口一博総務大臣の指揮の下、総務省ではグローバル時代におけるICT(情報通信技術)政策に関するタスクフォースが発足し、通信や放送に関する諸問題を議論していく。具体的には「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応部会」「ICT産業全般の国際競争力強化部会」「地球的課題等の解決への貢献部会」を立ち上げ、各部会で検討した結果を政策決定プラットフォームに報告する体制を構築した。
原口総務相の基本的な考え方は、(1)国民主体、(2)障害者を含む国民のICT利活用を促進、(3)部会には政務三役(大臣、副大臣、政務官)が参加し、優れた提言はすぐに実行、という3点に集約される。「今までの供給者の論理からは180度転換した。今後は国民のニーズに基づいて政策がスピーディーに動くはずだ」とタスクフォースメンバーの1人である東洋大学 経済学部の山田肇教授は話す。
山田教授が特に注目したのは、原口総務相が障害者(Challenged)のICT活用を強調している点だ。Challengedとは、神から挑戦すべき課題や機会を与えられた人という意味で、米国のジョン・F・ケネディ元大統領が就任式の際にこの言葉を使用したことで知られている。ケネディ元大統領を尊敬する原口総務相は、国連障害者の権利条約推進議員連盟で副会長を務めるなど、障害者に対する取り組みに力を入れている。今回のタスクフォースでは、すべての人々に等しくコミュニケーションの権利を保障する観点から障害者に対する政策は不可欠だという。山田教授は「電車内などで見られる音声なしの字幕付きCMをなぜテレビでも流さないのか。広告をはじめ通信や放送における課題はまだ多い」と強調する。
こうした課題の解決はビジネスチャンスにつながる。「(米Googleが運営する)YouTubeは音声認識技術を用いて動画に自動で字幕を付ける機能を設けて障害者の利用を促進している」と米国での先行事例を山田氏は紹介した。
加えて、今後さらに少子高齢化が進む日本において、高齢者向けのビジネス市場は拡大が見込まれているため、先行する市場での成功は世界進出の足掛かりになるという。しかしながら、「(総務省によると2012年には)高齢者人口が3000万人を超える。にもかかわらず、この市場に積極的に打って出る日本企業がいないのは残念」と山田氏は苦言を呈した。
※11月24日に日本アドバタイザーズ協会が開催したセミナー講演を基に構成。
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明治学院大学 経済学部准教授