阿部と浅賀が加わった最初の勉強会を終えた面々は、いつもの食事処へと向かった。そこには、数週間前と同様に、情報システム部長の秦野と経営企画部長の吉田が5人を待ち構えていた。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ
集中した沈黙のブレインストーミングの後、川口は皆の疲れた頭を解きほぐすためにMECEの概念を説明し、それを踏まえて「分類の訓練」を行った。スポーツ競技を分類するという柔らかいテーマであったことと、皆が声に出して意見を出し合う手法が気分的には楽だったようで、初参加の阿部と浅賀も積極的に発言した。
一通り意見が出尽くしたところを見計らって、川口が「残り時間も少なくなったので、今日は次回やることを説明して終わりにしよう」と切り出した。
「前回、前々回で宮下君と奥山さんが洗い出し、それを階層的にまとめた課題と、今回4人で洗い出した解決策との関係を結び付けるのが次回の作業だ」。川口は、ホワイトボードに図を書きながら続けた(図1)。
「まず、課題を左に並べる。これについては、以前行った階層化に基づいて第3レベルまたは第4レベルくらいの課題を列挙すれば良いだろう。そして、今回ブレインライティング法で洗い出した解決策を右に並べていき、これらの間で関係するものを線で結ぶのだ。この図に示すように、1つの解決策が2つ以上の課題を解決する場合もあれば、1つの課題を解決するために複数の解決策を講じなければならないものも出てくるだろう」
「なるほど…」と言いながら、宮下が質問を投げ掛けた。「今日、ブレインライティングを行う際、最初に1行目を分担しましたよね。ちょうど課題の第4レベルが12枚あったので、その表現を裏返して解決策の1行目にしたはずです。課題の列挙は、この12枚でいいのですか」
この問い掛けに、川口は1枚のカードを示しながら応えた。「そうだ、それでいい。例えば、課題の『IT部門のリサーチ能力が不足している』というカードは、そのまま課題として並べればよい。ただし、その解決策として『IT部門のリサーチ能力を強化する』をそのまま解決策として並べるのでは単に言葉を裏返しただけだ。解決策を挙げるときは、これを一段掘り下げて」と話しながら1枚のカードを掲げて「例えば『講師持ち回りで技術勉強会を開催する』という解決策を挙げなくてはならない」と説明した。
「なるほど、確かにそうしなければ具体的にどうしなければならないか分かりませんね」と浅賀が納得したようにつぶやいた。
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明治学院大学 経済学部准教授